ハーバード大学、「セクハラ教授」を何年も野放しか? 女子大学院生の告発で名門に激震
クーリエ・ジャポン 2022/2/15(火) 7:30配信
ハーバードの大学院生になった初日、リリア・キルバーンは指導教授のオフィスまで自転車で向かった。南アフリカを専門とする著名な人類学者のジョン・コマロフ教授だ。
だがキルバーンは、コマロフに自転車のヘルメット姿を褒められて、ざわざわとした不快感を覚えた。コマロフは以前、彼女に無理やりキスをしたことがあるからだ。
そこでキルバーンは、コマロフの気をそらすべく、夏休みには恋人と旅行に行っていたと告げた。恋人について語るときは意図的に女性の代名詞を使い、パートナーは女性であることを強調した。
するとコマロフはキルバーンに向かって仰々しく説教を始めたという。アフリカの一部の地域では、レズビアンは「矯正レイプ」されたり殺されたりすることがある、と。コマロフはそれを「楽しそうに」話したと、キルバーンは振り返る。
2月8日、キルバーンを含む3人の女子大学院生がハーバード大学を相手取り訴訟を起こした。大学側はコマロフのセクハラ疑惑を何年にもわたって無視してきたほか、そのせいでコマロフが通報しようとする学生を脅迫できる環境になっていると訴えている。
コマロフの弁護団はこの訴訟を受けて、彼に対するいっさいの嫌疑を否定し、キルバーンにキスをしたことも、不適切に触ったこともないとの声明を発表。レイプに関する発言は、同性愛が犯罪とされるカメルーンを同性のパートナーと旅行する際には、身の安全に気をつけてほしいというアドバイスだったと主張している。
コマロフを擁護する教授たちも
コマロフのセクハラ疑惑は、すでに1年以上前からハーバードの大学新聞で報じられてきた。また今回の訴訟には、コマロフがシカゴ大学の教授だった頃に被害を受けたと訴える匿名の女性たちも含まれている。
ハーバード大学は訴訟が起こされる以前に独自調査を実施。コマロフは大学のハラスメントポリシーに違反したと結論づけたものの、望ましくない性的接触の責任は追及しなかった。コマロフはこの春のセメスターは休職扱いとなっており、5月からの新年度では必修コースの指導を禁じられている。
コマロフの疑惑をめぐっては教授陣も分断している。訴訟が起こされる直前、ハーバードだけでなく他の大学からも90人を超える学者たちが、コマロフを擁護する公開文書に署名。彼の学者としての知名度や指導力を褒め称えた。
しかし、キルバーンらが訴えを起こした翌日、それまでコマロフを支持していたハーバード大学の教授陣の大半が、おぞましいセクハラの詳細を知ったことで「前言を撤回する」と題した新たな公開文書を出した。
すれ違いざまに太もも「ギュッ」
訴状によれば、コマロフのキルバーンに対するハラスメントは、あのレイプ発言だけではない。
2017年冬、キルバーンがハーバードとコロンビア、どちらの大学院へ進学するか悩んでいた頃、オープンキャンパスに訪れた彼女をコマロフがランチに誘い、別れ際に口にキスをしてきたという。さらにコマロフは彼女の耳元でささやいた。「コロンビアもオープンキャンパスに行ってみればいいよ。そしてここに戻ってくればいい」と。
キルバーンは「あれは事故だったと必死に思うようにしました」と言う。「でも、その後の彼の言動から事故ではなかったことが明らかになったのです」
別の機会にコマロフの家でブランチを食べたとき、彼女がバッグを取りに行くとコマロフが後をついてきて、またキスを迫ってきたという。
「キルバーン氏は彼を押しやり、自分の口をふいたが、その様子を見たコマロフ教授は笑みを浮かべた」と訴状には記されている。
キルバーンはコマロフを避けるようになり、毎週の面談も行かず、保守的な服装をするようにもなった。それでも講堂ですれ違った際に、コマロフが彼女の太ももをつかんできたこともあったという。
彼女は大学に通報したが、「無視された」と訴状に記されている。キャンパス内のセクハラ問題を担当する部署の職員は、彼女がコマロフの名前を出す前に、容疑者は誰か言い当てたにもかかわらず、だ。