〈アカハラで停職6カ月〉「自宅や研究室で性行為を…」早稲田大学“女性准教授”が男子学生に訴えられた

〈アカハラで停職6カ月〉「自宅や研究室で性行為を…」早稲田大学“女性准教授”が男子学生に訴えられた
文春オンライン 2022/6/17(金) 18:12配信

 6月17日、早稲田大学政治経済学術院所属の教員がアカデミックハラスメントをしたとして、停職6カ月の懲戒処分になっていたことが報じられた。当該教員は大学を退職したという。

「改めて大学全体での教員研修を行う」とした早稲田大学。このハラスメントは「 週刊文春 」に寄せられた告発によって明らかになっていた。名門大学で一体何が起きていたのか。当時の記事を公開する。(初出:「週刊文春」 2022年4月7日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)

◆◆◆

「自殺予防という社会的弱者の救済を研究テーマとする大学教員が、欺瞞的な態度をとり続けていることに怒りを覚えます。早稲田大学は彼女のハラスメントをなぜ隠蔽するのか。不信感と悔しさで一杯です」

 こう吐露するのは、早大院博士課程に在籍する男子学生Aさん(25)だ。

 Aさんは2014年に早大政経学部に入学。そこで出会ったのが指導教官のB准教授だった。

「米国の名門大で博士号を取得した40代後半の才媛です。自殺予防学の専門家としてテレビや全国紙に何度も登場。既婚者で子供もいます」(早大関係者)

 Aさんは2年時からB准教授の研究助手に就いた。ところが17年3月、台湾大学への出張に誘われたことをきっかけに関係は変容したという。Aさんに事情を聞いた早大教職員が語る。

「台湾の宿泊先に用意されていたのは同じアパートメントでした。A君が昼にベッドで横になっているとB先生が身体をまさぐりはじめ、『もうここまで来たのだから』と……。A君は性行為の経験もなく、拒否できなかったのです」

 次第にAさんは恋人のように扱われ始めたという。

手をつないで“神楽坂デート”を…

「手をつないで神楽坂でデートしたり、B先生の自宅に泊まったり、子供の送迎や夕食の用意をさせられることも。性行為は自宅や研究室でもあり、同泊の海外出張も計4回あったといいます」(同前)

 相手は博士課程への進学のために推薦状を書いてもらう指導教員であり、家庭を持つ女性でもある。Aさんは、深く思い悩んだ。

「『こういう関係はやめよう』と何度も話し、性行為の最中に伝えることもあったそうです。しかしB先生は『口外するな』と言うばかりだったと」(別の教職員)

 こうした関係は、18年夏頃まで続いたという。

「A君は別の教員の指導を受け、修士課程をトップで修了。その一方でB先生との関係が原因でPTSD状態に陥って、周囲に『死にたい』と頻繁に漏らし、自殺も考えた。B先生に抗議のメールを送ると、『私の過ちだった』と返事があったものの、誠意ある謝罪はなかったそうです」(同前)

 そこでAさんは21年3月、早大のハラスメント防止委員会に申し立てをした。ところが同年7月に出たのは「ハラスメントはなかった」という結論だった。

 納得ができないAさんは訴訟を検討。すると、大学側は外部の弁護士から構成される「コンプライアンス委員会」を8月に立ち上げ、再調査を開始した。

 小誌は調査結果が記載された内部文書を入手。22年3月18日付で田中愛治総長の名義で出された文書は〈性交した事実を認められず(中略)セクシャルハラスメントがあったとは認定できなかった〉とする一方で、こう書かれている。

〈対象者が、大学教員と学生という立場の違いを鑑みず、本件学生と出張先で同室に宿泊したり、本件学生を自宅に宿泊させたりする等、教育研究活動における必要性を超えて親密に接したことは、大学教員として不適切な行動であった〉

 ハラスメントに詳しい井口博弁護士はこう指摘する。

「教員と学生という拒否が困難な関係性の中で、同泊などの適正な指導の範囲を超えた不適切な行動があったことは認めており、すでにアカデミックハラスメントの要件は満たす。それにもかかわらず、ハラスメントがなかったという大学側の結論は理解に苦しみます」

 冒頭のように疑問を抱いたAさんは3月25日、性行為を強要され、精神的苦痛を被ったとしてB准教授と早大を東京地裁に提訴。B准教授に質問状を送ると、弁護士を通じて回答した。

准教授の回答は…

「(台湾への同行は)A氏が希望したので許可した。民泊アパートは同じだったが同部屋ではない。自宅への宿泊は事実だが、A氏に強要したものでないので、ハラスメントには該当しないという認識。(性交渉の強要は)事実ではない。デートしたり手をつないだりといった恋人としての関係は一切ない。子供の送り迎えや夕食の用意は事実だが、強要したものではない」

 早大広報課は「2度にわたりしっかり調査をした。調査で直接俎上にのらなかった行為の中に教員として不適切な行動があった可能性があり、それが事実と認定されれば、厳正な対処を検討する」などと回答した。

「大学が何もしなければ同様の被害が発生する」と語るAさん。不信感から3月末で早大を退学し、米国で博士号取得を目指しながら裁判に臨むという。

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