東京書籍、現職教員に報酬 文科省が指導
産経新聞 2022/6/17(金) 17:41配信
教科書会社最大手の東京書籍(東京都北区)が平成29〜令和3年の5年間、小中学校の現職教員を、教科書や教材に関する助言を行う「教育課題アドバイザー」に任命し、報酬を支払っていたことが17日、分かった。特別調査委員会の報告を受けて同社が発表した。調査委は教科書採択に関与した教員がいなかったなどとして「法的な問題はない」と結論付けた一方、「手続きや運用で不適切な点があった」と指摘した。
教科書採択を巡っては平成27年、検定中の教科書に関する意見を聞いた謝礼として教科書会社が教員に謝礼を支払っていた問題が発覚。業界団体の教科書協会は問題を受けてルールを厳格化し、教員らに教科書の意見聴取で対価を支払うことを禁じている。
調査委の報告書などによると、東京書籍は29年にアドバイザー制度の運用を始め、元教員や大学教授ら年間約300〜400人を任命。このうち現職教員が毎年3〜6人含まれていた。アドバイザーには年間15万円の報酬が支払われた。
調査委はこれまでにアドバイザーに任命された22人の現職教員がいずれも教科書採択に関与せず、情報提供なども確認されていないとして「法的問題はなかった」と結論。一方、アドバイザー任命の可否について文科省や教科書協会に確認をせず、アドバイザー業務に関する社内規定などが整備されていなかったことなどから「ガバナンス(組織統治)の観点から適切さを欠く」と指摘した。
文科省も法的問題はなかったとしつつ「教科書採択には高い公正性が求められており、懸念を持たれることがあってはならない」として今月、東京書籍を行政指導した。
東京書籍は昨年11月、制度を廃止。同社は「本件を深く反省し、さらなるガバナンスの強化と健全な経営の持続に努める」などとしている。