「腐ったミカン」は退職勧奨 追手門学院元職員に労災認定 労基署
毎日新聞 2022/8/29(月) 17:31配信
学校法人「追手門(おうてもん)学院」(大阪府茨木市)の職員だった50代の男性がうつ病を発症したのは、職員研修の外部講師から「腐ったミカンは置いておけない」などと退職を何度も迫られたのが原因だとして、茨木労働基準監督署が男性の申請通り労災と認めた。3月25日付。男性の代理人弁護士が明らかにした。労基署は講師の発言を法人の意向に沿ったものだと認定し、「退職勧奨とも人格否定ともいえる」と批判した。
代理人や労基署の調査文書によると、男性は2016年7月、面談した複数の法人幹部から「今の能力ならば組織人としていらない」として退職を勧められ、8月に実施された5日間の職員研修への参加を指示された。
研修では、法人の委託を受けた東京のコンサルタント会社「ブレインアカデミー」の外部講師が、「あなたのように腐ったミカンを置いておくわけにはいかない」「老兵として去ってほしい」と連日のように発言。16年度末での退職を了承するよう求められた。
男性は体調を崩し、17年2月にうつ病と診断された。これ以降は休職し、20年8月に休職期間が満了したとして退職扱いにされた。
労基署は研修に同席した法人の人事担当者が発言の訂正を求めなかったことを踏まえ、講師の発言は法人の意向に沿った内容だったと認定。法人側は研修後も、雇用の継続を希望する男性に退職を勧奨したとして、男性は業務中に強い心理的負荷を強いられたと判断した。
男性は20年8月、労災認定を申請するとともに、研修後に「抑うつ状態」と診断された元職員2人との計3人で法人や理事長に損害賠償などを求めて大阪地裁に提訴した。訴訟は現在も続いており、男性は取材に「屈辱的な発言で人生を狂わされた。法人は裁判でも事実を認めて謝罪してもらいたい」と話した。
法人の担当者は「係争中のため個別の対応は差し控える」と語った。【山本康介】