【独自】「取材対応」理由に園長解雇 理事長独断で後任選定を依頼した保育所
西日本新聞 2022/10/7(金) 11:02配信
福岡県久留米市で認可保育所を運営する社会福祉法人が、西日本新聞の取材に応じたことなどを理由に園長だった女性を解雇したことが分かった。この法人を巡っては、理事長が理事会の決議を経ずに後任選定を仲介業者に依頼していた経緯を本紙が報じていた。識者は、「内部告発者を報復から守る公益通報者保護法の趣旨に反する」と指摘する。
解雇は、9月26日にあった法人の臨時の理事会で同意され、同27日に通知書が元園長に手渡された。通知書には五つの理由が列挙され、その一つに元園長が6月初旬ごろ、勤務時間中に西日本新聞記者を園内に入れて取材に応じた旨が記されていた。仲介業者からのファクス文書を元園長が記者に見せるなどし、6月14日付の本紙朝刊で報じられたことも記載されていた。
理事長は理事会に諮ることなく、企業主導型保育所を営む兵庫県の企業の女性社員を後任理事長に推す方向で仲介業者と話を進めていた。5月末、園に届いた仲介業者からのファクス文書を見た職員がこの計画を知り、保護者も反発。保護者たちは6月7日、事実確認を求める要望書と3180人分の署名を添えた嘆願書を市に提出した。
本紙は複数の関係者に取材の上、理事長が独断で後任選定を企業の合併・買収(M&A)を担う仲介業者に依頼した事実を確認。理事長への権限集中を防ぎ、公益性の高い保育所などの運営適正化を図る社会福祉法の趣旨に反する疑いを報じていた。
本紙取材に対し、元園長は「事実確認なしに解雇された」と反論。理事長は「弁護士を立てて動いている」と応じなかった。
内部告発者の保護を定めた公益通報者保護法は、通報者の不当な解雇を禁じている。元朝日新聞編集委員で上智大の奥山俊宏教授(メディア論)は「記者の取材に応じたから解雇という事態がまかり通ると、やがて大切な情報が社会に流通しなくなる」と指摘。公益通報制度に詳しい中村雅人弁護士(東京)は「園全体の利益に資する情報であり、その情報は広く知られてもいる。事実確認もしていないのに、解雇の理由にすべきでない」と批判する。
(木村知寛)