療育NPO理事長を追送検、利用者の髪引っぱった疑い 被害者4人に

療育NPO理事長を追送検、利用者の髪引っぱった疑い 被害者4人に
毎日新聞 2022/11/16(水) 6:00配信

 発達障害のある中学生らが「療育」名目で相次ぎ監禁されたとされる事件で、重い知的障害のある20代の女性への暴行が新たに裏付けられたとして、障害者支援を掲げる福岡市のNPO法人「さるく」理事長、坂上慎一被告(57)=同市早良区、逮捕監禁罪で公判中=を、福岡県警が暴行容疑で追送検したことが捜査関係者への取材で判明した。14日付。立件された事件の被害者は4人に上り、県警は一連の捜査を終結した。

 被害女性は他の被害者3人よりも障害の程度が重く、自傷や他害など激しい問題行動を繰り返す「強度行動障害」があった。女性に自閉症はなかったが、重度の知的障害を伴う自閉症の人に表れやすいとされる。坂上被告は「訪問セラピー」と称し、自宅を訪ねて強度行動障害の改善を図る事業を10年以上前から展開しており、今回立件された被害もセラピー中だった。

 追送検容疑は2021年4月23〜24日ごろ、同区に住んでいた当時22歳の女性の自宅やその周辺で、女性の髪を引っ張るなどして暴行したとしている。関係者によると、坂上被告は「暴行の認識はなかった」と述べているという。

 女性の保護者がセラピーの様子を撮影した動画には、言葉で思いが伝えられず、壁に頭を打ち付けようとする女性に坂上被告が覆いかぶさったり、髪を引っ張ったりするなどしていた状況が記録されていた。

 関係者によると、動画の提出を受けた県警は、複数の医師や療育の有識者らにも意見を聞きながら慎重に捜査を続けた。その結果、強度行動障害を鎮める目的であっても、髪を引っ張る行為などは「療育の範囲を逸脱した暴行に当たる」と判断。起訴を求める「厳重処分」の意見を付けて追送検したとみられる。

 追送検を受け、被害女性の保護者は「被害当時は(坂上被告に)すがる思いだったが、娘はセラピーの最中に指を骨折した。行政は、強度行動障害で苦しむ人の支援を充実させてほしい」と願った。

 坂上被告は長崎、福岡両県の中学生3人を17〜21年、それぞれ監禁したなどとして3回にわたり逮捕・起訴された。起訴状などによると、発達障害などがある中学生の両手足を結束バンドで拘束し「殺すぞ」と脅しながら、車で山に連行するなどしたとされる。一部の事件では、坂上被告を手伝ったとして小学校教諭、松原宏被告(37)=福岡県篠栗町=も逮捕監禁罪で起訴されている。【佐藤緑平】

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