「生徒へ謝礼」証言も…塾の中学テスト過去問指導「昔からどこでも」
西日本新聞 2023/2/17(金) 11:12配信
中学校の定期テストを集めて保管し、学校に無断で「過去問」として生徒に解かせる指導が福岡県内の複数の塾で常態化している問題を巡り、本紙「あなたの特命取材班」はウェブサイトでアンケートした。指導を「知っていた」「ずっと以前から存在する」といった回答が全国から寄せられ、同県だけでなく、各地の塾で長く定着している実態が浮き彫りになった。
本紙は1月25日にこの問題を報道。毎年、同じか似た問題を出す中学教員がいる上、点数が内申点に反映され、高校入試に影響する仕組みが背景にあると指摘した。識者などからは、生徒が問題や正答を丸暗記する恐れや、塾に通えない生徒との間の不公平、著作権法違反の懸念が示された。アンケートは1月27日に呼びかけ、2月14日午後までに約140件の回答があった。
「知っていた」が7割
塾による定期テストの過去問指導を「知っていた」としたのは7割。大阪市の塾経営者の男性(47)は「昔からどこでもある」。東京都の男性塾講師(43)は「都内の大多数の塾がやっている」と明かした。
中学側も把握し、福岡県の男性教員(36)は「前年に私が作った問題を生徒が持っていた」と振り返った。塾が生徒を使って定期テストの問題を集める現場に遭遇した教員の声もあり、愛知県の男性教員(48)は「問題用紙を塾に持参すると謝礼がもらえると話す生徒がいた」と証言した。
「よくない」多数だが…
過去問指導に対する賛否も聞いた。半数が「よくないと思う」と回答。「点数だけの学習になってしまう」と記した宮崎県の中学女性教員(53)のように、本当の学力に結びつかないとする主張が目立った。福岡県久留米市の男性公務員(50)は「塾の生徒だけが過去問を解けるのは公平性に欠ける」。横浜市の中学女性教員(59)は「私たちは何週間もかけて問題を作る。そのコピーで金を稼ぐ塾は許せない」と憤った。
「いいと思う」は3割。神奈川県の児童英語教師の男性(72)は「過去問は生徒に習得してほしい内容なので、繰り返し学習するのは有意義だ」と評価した。
「仕方がない」は2割で、奈良市の主婦(40)は「内申点を上げるためにやむを得ない」。長崎県の中学女性教員(50)は「出題を変えない教師に問題がある」との意見だった。 (小林稔子)
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アンケートは多様な声を聞き取るのが目的で、無作為抽出で民意を把握する世論調査とは異なります。