泉南市・中1いじめ自殺から1年 「いじめ」訴え続けたのに…“我が子の死”放置する教育現場【大阪発】
FNNプライムオンライン 2023/4/1(土) 9:32配信
自ら命を絶った我が子に何があったのか、真実を知りたい。そのために我が子の死を放置する教育現場と闘っている家族を取材した。
「遠くへ行く」と言い…命絶つ 訴え続けていた“いじめ” なぜ放置?
3月11日、大阪府泉南市でしめやかに取り行われた法要。
泉南市立の中学校に通っていた松波翔さんは、1年前の3月18日、「誰も知らない遠くへ行く」と兄に告げ、ひと気のない場所で自ら命を絶った、13歳だった。
松波翔さんの母 松波千栄子さん:
こんな寂しいところで逝かせてしまったって。こんな近くにおったのに…助けてあげられへんかったから…つらいです
幼いころ走るのが速く、好奇心旺盛だったという翔さん。しかし、小学3年のころから、ほかの児童や教師からの「いじめ」を訴え、学校へ行かない日が次第に増えていった。
中学に進学後、一度は学校に通い始めたものの、小学校での不登校を同級生から「少年院帰り」などとからかわれ、再び不登校になった。
松波翔さんの母 松波千栄子さん:
コンピューターに興味を持ちだして“C言語”って、「プログラミング言語学びたい」、「これ勉強するんや」って言って…亡くなる数カ月前にこれ(本)買って、まだきれいなまま。学校に行きたい(という思い)は、常にあったと思うんです。「教育(の機会)を与えないといけない。そういう義務が法律で決められているのに、教育委員会や教師が僕のその権利を奪っている」というのを「すごく理不尽だ」と怒っていたから
翔さんが繰り返し読んでいた“子ども六法”。「将来は検事になって悪い人を裁きたい」と夢を語っていた。
“放置された”訴え 転校を求めるも…学校と市教委のずさんな対応
実は翔さんは、長い間、学校や教育委員会、SNSの相談窓口など様々なところに助けを求めていた。
翔さんのLINE相談メッセージ:
教師たちにいじめられ、6年の1年間学校にいけなく、「教育委員会に言っても、教師が教育委員会の人と仲いいから何言われても平気」と言われる始末。僕らだけつらい思いして、理不尽すぎ
翔さんと母親の千栄子さんは、学校や教育委員会に何度も相談し、亡くなる半年ほど前には、教育委員会に転校を求めたが、聞き入れてもらえなかった。
松波翔さんの母 松波千栄子さん:
何も対応してくれない。私たち親子はどうしていいか分からなかったのは事実です。すべてが不信感だったから
なぜ我が子が自ら命を絶たったのか。その背景を知りたいと、教育委員会に何度も連絡し第三者を入れた話し合いがしたいと訴えたが、返答はなかった。
翔さんが亡くなってから1カ月ほどたったある日の教育委員会の担当者と翔さんの兄との電話でのやり取りの記録が残っている。
翔さんの兄:
話し合いはしたいですから。第三者を立てるとか、第三者委員会ってどうなっているんですか?
教育委員会 担当者:
我々の方で、その委員会を立ち上げて設定するという用意は、今のところございません
不登校になっていた翔さんが自殺したにもかかわらず、教育委員会は4カ月以上も詳細な調査をしていなかった。その理由は、驚くべきものだった。
泉南市教育委員会事務局 岡田直樹教育部長:
お亡くなりになったことは分かっていても、その事実やどういう状況で亡くなったか保護者の方から伺えていないんですね。今となっては、連絡がなかなか取れませんので
家族が「話し合いがしたい」と要望したにもかかわらず、教育委員会は「連絡が取れない」と説明。
学校では、翔さんが亡くなったことを半年間、同級生らにも知らせていなかった。