認知症疑い患者の3億円寄付、原告代理人「寄付が原因で借金残る」「極めて異常な額」
読売新聞オンライン 2023/4/29(土) 8:57配信
認知症の疑いがあったにもかかわらず、患者に3億円を寄付させたのは不当だとして、遺族らが金沢医科大(石川県内灘町)と主治医(同大病院前院長)に2億4750万円の損害賠償を求めて金沢地裁に起こした訴訟で、27日、原告側が金沢市内で記者会見し、「第2、第3の被害者を出さないために訴える必要があった」と経緯を説明した。代理人は、準詐欺容疑での刑事告訴も検討するとしている。
提訴したのは、同市の機械メーカー「渋谷工業」前社長・渋谷弘利さん(2021年10月に90歳で死去)の妻(87)と娘2人。
訴状などによると、渋谷さんは21年1月、サウナで脱水症状となって倒れ、同大病院に約1週間入院。認知機能の低下が疑われたため、検査を行ったところ、大脳の萎縮(いしゅく)が確認された。その後も通院し、同年5月、同大創立50年に合わせた募金として3億円を寄付した。
寄付は家族に知らされておらず、渋谷さんが同年10月、心不全のため自宅で亡くなった後に、家族が銀行の書類を見て判明したという。
原告側によると、22年3〜8月、寄付金の返還を求めて調停を申し立てたが、大学側は応じず、不調に終わったという。長女(62)は「寄付に納得できず、大学の真意を聞くため交渉を続けたが、不誠実な対応をされた」と訴えた。
会見で、代理人は「寄付が原因で借金が残るなど、3億円という額は極めて異常」と主張。長女は「家族に内密に、患者の病状を利用して多額の利益を得るという悪質な行為が認められてよいはずがない」と不信感をあらわにした。
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