湖西いじめ 第三者委が認定 学校、市教委対応「不適切」 市立中生不登校
あなたの静岡新聞 2023/5/12(金) 7:05配信
湖西市立中で2019年、当時2年生の女子生徒が部活動で無視されたとして不登校になった問題で、いじめの重大事態への対応として21年11月に設置された第三者調査委員会は11日、いじめがあったと認定する調査報告書を公表した。いじめの認定を見送っていた当時の学校側や市教委の対応は不適切だったとし、「いじめ防止対策推進法の理解が浅薄だった」と指摘した。
調査委は学校や市教委、保護者側が提出した記録を調べ、当時の教職員や保護者への聞き取り、部員へのアンケートなどを行った。報告書では、法令上のいじめの定義が被害者側の苦痛を基準にしていることを前提に「行為者に明確な害意がなくても、(被害者側が)苦痛を感じていれば法文上の『いじめ』と言うべき」と認めた。
学校側は当時、女子生徒に聞き取りができないなどとしていじめの認定を見送ったが、調査委は20年3月に教員が行った部員への聞き取り調査の内容などから「一部の生徒の態度や言動から(被害生徒が)苦痛を感じていたことは十二分に推認される」とした。
その上で、生徒の欠席が続いた中で「遅くとも19年11月下旬には重大事態として認め、調査委の早期設置を図らなければならなかった」と強調。学校側が初動対応を誤り、医師の診断やスクールカウンセラーの知見を軽視した結果、被害者の体調不良や不登校が長期化したと結論づけた。
また、当時の校長が早い段階から「いじめではない」との誤った認識を持ち保護者対応を抱え込んだことも問題点に挙げ、組織的対応の重要性を指摘した。
報告書は市教委の責任にも言及。再三にわたり重大事態の認定を求めた保護者の訴えに対応せず、21年4月に書面の申立書が提出されるまで学校側に対応を委ねていたことを、「主導的な対応を図る姿勢を見せなかった」と批判した。
委員長を務めた原道也弁護士は記者会見で「いじめ問題の対応では、本人の心身の苦痛に寄り添う姿勢を示すことが最も重要」と訴えた。
調査委は11日、市長と市教育長に報告書を提出した。
■元生徒の母親会見 長かった4年 「涙止まらない」
湖西市立中のいじめ重大事態に対する第三者調査委員会の報告を受け、被害を受けた元生徒の母親(50)が11日、市内で記者会見した。いじめの認定に安堵(あんど)しながらも、4年を要したことに「失った時間を考えると涙が止まらない」と語った。
両親は当初からいじめ問題として対応するよう学校に求めてきた。娘の体調不良と不登校が長期化する中、学校や市教委にいじめ防止対策推進法やガイドラインを示し、何度も重大事態の認定を求めたが聞き入れられなかった。事態が動いたのは、卒業後の21年4月に支援者の助言で申立書を提出してから。その間、県教委や文部科学省にも対応を求めたが「『自分たちは権限がない』と学校へ回され、何度も振り出しに戻った」という。母親は「先生には自分たちではなく、被害に遭った子を一番に守ってほしい」と訴えた。
保護者側は今後、市に検証委員会の設置や関係者の処分を求める方針という。
保護者を支援するNPO法人ユース・ガーディアンの阿部泰尚代表理事は「校長に権限を集中させたことで、初期対応が極めてずさんになった。市教委も含めて“逃げ”の対応が目立つ」と批判した。
■「長期化申し訳ない」 市教育長
湖西市教委の渡辺宜宏教育長は11日、第三者調査委員会の報告を受け報道陣の取材に応じ、被害を受けた生徒や保護者に対し「長期化してしまい申し訳ない」とコメントした。再発防止策として「市教委に(いじめ問題に対応する)第三者委員会を常設したい」との意向を示した。
調査委に教員の法解釈の甘さを指摘されたことを踏まえ、専門家を招いた研修を実施することや、各学校のいじめ対策の組織体制を再点検する方針も示した。