「全員1回は泣かせる」 学生へのアカハラ認定 元副学校長ら戒告
朝日新聞デジタル 2023/7/15(土) 13:00配信
愛知県蒲郡市は14日、市立ソフィア看護専門学校で15件のアカデミックハラスメントがあったとして、副学校長だった女性看護師(62)=現・専門員=と、教員の女性看護師(52)を戒告の懲戒処分にしたと発表した。「教員により学生へのハラスメントがなされ、元副学校長が事実上容認、助長していた」と結論づけた。処分は13日付。
■15件のハラスメント行為を認定
昨年6月、2、3年生と保護者がハラスメントを訴え、鈴木寿明市長あてに要望書などを提出。市は、教育長や弁護士らでつくる調査委員会を立ち上げ、1年がかりで学生や教員らに聞き取りをして報告書にまとめた。14日に公表した。
報告書では、教育現場での指導と叱責(しっせき)の線引きについて、「教育指導の目的を有していた場合でも、叱責が教育指導として適正な範囲を超えている場合にはハラスメントに該当する」と定義。教員自身が怒りの感情をコントロールしないまま、「学生から弁明を聞き取ることなく叱責する」「他の学生の面前で大声で叱責する」「学生の人格を否定するような内容の叱責をする」などと具体例を挙げた。
その上で、3人の教員にについて、学生に対する計15件のハラスメント行為を認定した。
うち11件が戒告処分を受けた教員の行為で、2年生全員に「全員1回は泣かせる」と発言したり、ほかの学生の前で特定の学生に、「3年生にあなたをあがらせない、あなたを落とす」と言ったりしたという。
元副学校長については、不適切な指導を容認するような態度を示したと指摘した。加えて、全学生を対象に学習環境などを確かめる年度末アンケートについて、保存期間を過ぎていないのに、廃棄したと述べたことを問題視。複数の学生から、指導の問題や教員変更の要望など意見が記載されていたからだ。報告書は「自身の監督責任の追及を免れようとして、証拠隠滅のために廃棄した可能性も疑われる」と一連の対応を批判した。
教員のハラスメントで学業に集中できないとして、愛知県蒲郡市立ソフィア看護専門学校(110人)の2、3年生55人と保護者95人が改善を求め、鈴木寿明市長あてに要望書と嘆願書を提出した。市側は15日の市議会一般質問で、調査をしたうえで教員向けにハラスメントに特化した研修を実施する方針を示した。
13日提出の要望書や嘆願書は2年生の8割強と3年生の8割近くが署名した。
要望書などによると、進級時の不安を相談した2年生に対し1人の教員が「10人は落とす」などと応じたり、十分な睡眠を取れないほどの膨大な量の課題を出され「文句があるなら学校を辞めて」などと言われたり、水を掛けられたりしたと訴えている。学校に相談しても対応してもらえなかったという。
3年生の話ではハラスメントは約2年前に始まり、教員3人にハラスメントを受けたという。3年生の嘆願書では教員3人と副学長の変更を求めている。
ソフィア看護専門学校は「看護師は命を預かる職業であり、教員による指導が『厳しい』と感じることはあると思うが、ハラスメントは容認されるものではない。要望書については、そうした事情も考慮して事実確認を行い、対応していく」とコメントしている。(戸村登)