<論文捏造>元東邦大准教授 筑波大が60本「不正」と認定

<論文捏造>元東邦大准教授 筑波大が60本「不正」と認定
毎日新聞 2012年12月26日(水)20時6分配信

 元東邦大准教授の藤井善隆医師(52)が書いた麻酔学の論文の大半が捏造(ねつぞう)だった問題で、筑波大は26日、藤井医師が在籍していた97〜05年の論文103本のうち60本を「不正」と認定したと発表した。藤井医師はすでに退職しているため、処分は見送るという。

 この問題は今年4月、国内外の専門誌の編集長が連名で疑問を表明したことから表面化。藤井医師が所属していた日本麻酔科学会が6月、「論文212本のうち172本に捏造があった」と認定した。212本のうち筑波大時代のものが最多で、同大の調査委員会が不正の有無を調べた。

 その結果、患者対象の臨床研究を基にした60本は、事前に義務づけられた実施の承認を得ていなかったのに、得たように記載していた。5本は、藤井医師とは別の研究者が責任著者で、不正がないことを確認した。残り38本については「データが本物と証明できない」と判断を保留した。

 藤井医師は調査に対し、不正認定された60本のうち2本についてのみデータの改ざんなどを認めたが、承認をめぐる虚偽記載は認めず、38本についても不正を否定している。

 「不正なし」と認定された5本は、同大が責任著者から実験ノートの提出を受けて調べたところ、実験で使った動物の数が、同大が提供した頭数の記録と一致したという。

 同大在籍中の00年、米国の専門誌が藤井氏の論文に疑義を呈していたが、調査されなかった。これについて同大は26日、「当時の上司が口頭で注意したのみで、大学側は関知していなかった。もし把握できていたら調査していた」と述べた。【久野華代】

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