いじめ問題の市教委報告で、市議が学校の隠蔽疑惑指摘/相模原
カナロコ 2013年2月15日(金)7時0分配信
相模原市立中学校3年の男子生徒が複数の同級生から傷害などの被害を受けていた問題で、市教育委員会は14日、市議会文教委員会に調査報告した。報告は最終的に了承されたが、議員からは学校の隠蔽(いんぺい)を指摘する声が相次いだ。
調査は昨年12月から約2カ月実施。異動した前校長を含め、年次ごとに生徒と関係した複数職員、生徒保護者にも聞き取りをした。経緯などを計8ページの冊子にまとめた。
文教委では被害生徒が昨年9月、腹部を足蹴りされた際の学校の対応をめぐり質疑が集中。学校は保護者に被害届を出すよう促した一方、市教委に必要な事故報告書を提出していなかった。複数議員が「重要性の認識を持ちながら市教委に報告しなかったのは隠蔽ではないか」と追及したが、市教委は「意図的に隠す意図はなかったと思う」といった回答に終始した。
校内でいじめの認知が遅れた点でも市教委は「学校は、(周囲に暴力行為を働くなど)落ち着かない生徒の対応に追われていた」と釈明。「アンケートで被害を訴えていなかった」「『平気です』との回答が得られていた」と被害生徒に責任の一端があるかのような見解も示した。
また2年生の時に当時担任が生徒の事例を学年会で報告したが学校全体で共有されなかった点は詳細な報告はなされなかった。
委員会後、白井誠一教育局長は「(隠蔽を)疑われたことは受け止めなければならない」と話した。今後、早期の問題解決にあたるため、事故報告書の提出基準の策定などを進める。
生徒の母親は神奈川新聞社の取材に対し、「報告書で声なきSOSを受け止める実効的な対策が示されなかったのは残念。いじめに苦しむ子どもを救う体制をもっと本気で考えてほしい」と話した。
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相模原・中3いじめ:学校の対応に問題 市教委が調査報告 /神奈川
毎日新聞 2013年2月15日(金)11時25分配信
相模原市中央区の市立中学校で3年男子生徒がいじめを受け同級生3人が傷害容疑などで逮捕された事件で、市教委は14日、学校の対応に問題があったとする調査結果を公表した。同日、報告を受けた市議会文教委員会では、学校側の隠蔽(いんぺい)を疑う声が上がった。【高橋和夫】
◇市議から隠蔽疑う声 聞き取りに被害生徒「1年時から受けてた」
市教委は学校に職員会議録や担任の指導記録を提出させ、被害生徒と保護者、校長、生徒指導主任、担任らに聞き取り調査した。
調査報告書によると、被害生徒は「1年の時からいじめを受けた」と話していた。学校側は毎年、生徒にいじめの有無を調べるアンケートを実施していたが、記名式だったこともあって被害生徒は記入しなかった。
学校側は、被害生徒の1年時の被害を殴り合いのけんかと判断し、特別な保護が必要とは認識しなかった。被害生徒は2年時にも数回、複数の生徒から暴力を受けたが、教諭の声かけにも「平気です」と答えたため、学校側は保護する積極的な対応を取らず、暴力を振るった生徒への対応が中心だった。
3年時の昨年9月7日、被害生徒は校内で男子同級生に腹を蹴られ、10月11日に別の男子に暴行された。同17日には更に別の男子に顔を膝蹴りされ鼻の骨を折る大けがをした。加害生徒3人は12月にそれぞれ逮捕され、保護観察処分を受けた。
学校側は9月の暴行時、被害生徒の保護者に警察への被害届提出を促す一方、けがが重くなかったため重要な事案と捉えず、校長は市教委に事故報告をしなかった。市教委は、この際の校長の判断は誤りだったとしている。
同校では今年度、教師への暴力が2件、窓ガラス破損など器物損壊が16件、火災報知器の発報が23件あったことも明らかになった。
市議会委員会では、委員から「9月の時点で事故報告が提出されていれば10月の2件は防げたのでは」「被害届を促しながら事故報告しなかったのは隠蔽では」と学校側の対応に疑問が出された。市教委は「意図的な隠蔽はなかった」と釈明した。
◇いじめ根絶へ、市教委が対応策
事件を受け市教委は14日、いじめ根絶に向けた小中学校の現場や市教委の対応策を発表した。児童・生徒が教室で周囲に気兼ねせず記入できる「いじめアンケート調査」の方法検討や、教職員の意識向上を図るため、いじめ対応マニュアルの改訂などを示した。
対応策は今回の事件について、いじめが続いたのに被害生徒は学校に相談できず、学校側も教師への暴行や器物損壊に追われて被害生徒の保護が十分でなく、市教委も学校への支援体制が不十分だったとの見解を示した。
その上で学校側は子どもの悩みを十分に把握すべきだと指摘。暴行など重要な事故が発生した場合に校長が市教委に出す事故報告書の提出基準を明確にするほか、各学校は生徒指導会議で教職員がいじめ問題への組織的・継続的な対応を検討することとした。
一方、学校を支援する組織として、市教委学校教育課に指導主事や学校・警察OBら12人で構成する「人権・児童生徒指導班」を新設。学校巡回による状況把握や深刻な事案への早急な対応、関係機関との連携強化を図る。5月と11月をいじめ防止月間とし、いじめ防止フォーラムを開いて学校と地域住民、警察など関係機関の意思疎通を進めるという。【高橋和夫】
2月15日朝刊