大津 中学校で卒業式 自殺生徒の父親 複雑な胸中
産経新聞 2013年3月13日(水)7時55分配信
■「卒業証書 素直に喜べず」
大津市で平成23年10月に自殺した市立中学2年の男子生徒=当時(13)=が通っていた中学校で12日行われた卒業式。生きていれば同級生とともにこの日卒業するはずだった男子生徒の父親は、晴れの日を迎えた卒業生たちに対し、メッセージを贈った。そこにつづられた言葉には、いじめの実態解明に当たって協力してくれたことへの感謝やかけた迷惑へのおわび、そして国がいじめ防止対策の法制化に乗り出す原動力になったことへのエールなど、さまざまな思いが込められていた。
一方、式の終了後には、法令上は卒業が認められない男子生徒のための“ミニ卒業式”が校長室で行われた。校長や教頭、3年の担任教諭らが参加し、男子生徒の名前が記された卒業証書が遺族に手渡された。校長の祝辞や教諭らによる校歌斉唱も行われたという。
父親は「卒業証書はいただいたのですが…。うれしいと素直に喜べず、夫婦ともども涙が止まらなかった」とコメント。校長室から出て同級生の男子生徒に卒業証書を持ってもらって写真を撮ったといい、「息子がいるような錯覚を起こした。しかしやっぱり息子はいない。卒業式の中に息子がいない現実は、やりきれない辛さを感じた」と苦しい胸のうちを表現した。
同校では、いじめ問題に適切に対応しなかったなどとして県教委から減給の懲戒処分を受けた校長が依願退職し、今月4日に就任した新校長が卒業式に出席。ただ、急な赴任だったことなどから卒業生約300人への証書授与は、より関係の深い教頭が行った。校長はあいさつの中で「一昨年秋の悲しい出来事をみんなで受け止め、前に進んでいこうとしていることに敬意を表します」と話した。