<たつの市教委>19年前の小6自殺「体罰」…事故死を訂正
毎日新聞 2013年3月21日(木)11時55分配信
兵庫県たつの市立揖西(いっさい)西小学校の6年生だった内海平(たいら)君(当時11歳)が1994年9月、男性教師から暴行を受けた当日に自殺したことについて、暴行と自殺との因果関係を否定して「事故死」として処理してきた同市教委が今月19日、「体罰による自殺」と認めて両親に謝罪し、文部科学省に訂正を報告していたことが分かった。市教委は、因果関係を認めた民事訴訟の確定後も見解を変えていなかったが、「当時の判断を修正できると分かった」として19年たって初めて認めた。
内海君は教室で運動会のポスター制作について質問した際、担任の男性教師に「何回同じことを言わすねん」と怒鳴られ、頭と頬を殴打された。内海君は帰宅後、自宅の裏山で首つり自殺した。
教諭は95年3月、暴行罪で略式起訴されて罰金10万円を支払った。しかし学校側は体罰との因果関係を認めなかったため、内海君の両親は96年9月、当時の龍野市を相手取り慰謝料など総額約7000万円の損害賠償を求めて神戸地裁姫路支部に提訴した。00年1月、市に3790万円の支払いが命じられ、教育現場での体罰と子どもの自殺との因果関係を認めた全国初の判決となった。しかし、市はその後も因果関係を否定し続けていた。
市教委は今月15日付で、事故死を自殺と改める訂正届を文科省に提出。19日に苅尾昌典教育長が内海君の両親宅で謝罪した。
市教委は見解を変えたことについて「当時『管理外の事故死』として処理したが、修正できると最近になって知った」「大津市のいじめ自殺問題など、社会情勢を考慮した」とし、「民事訴訟の敗訴判決に対して控訴しなかったことで、市教委が体罰による自殺を認めたと理解してもらえると思っていた」と説明。今になって見解を変えた理由は明確にしなかった。
内海君の父、千春さん(54)は「19年は長かったが、やっと変えさせることができた」と評価する一方、「市教委側の隠蔽(いんぺい)は明らか。被害者と教育行政が真剣に対話し、新たな事後対応のシステムを作らなくてはならない」と再発防止を訴えた。【小泉邦夫、渕脇直樹、幸長由子、高橋一隆】