いじめ発覚、わが子を守る最強の武器
プレジデント 2013年4月5日(金)15時15分配信
■警察への届け出は躊躇すべきではない
わが子がいじめにあっていると疑われるとき、どうすればいいか――。まずは担任の教師に相談することだ。担任の対応に不満があれば、教頭や校長に訴える。教育委員会や自治体でもいい。やれることは、すべて試してみるべきだ。特に学校は保護者からの情報を求めている。「モンスターペアレントと思われてしまう」と心配する人がいるかもしれないが、私の経験上、そういう自意識のある人は、モンスターにはならない。
文部科学省によると、全国の小中学校でのいじめの認知件数は7万231件(平成22年度)。いじめのある学校は、小学校で35%、中学校で55%となっている。だが、この数字は少なすぎる。いじめのない学校など考えられない。普通のクラスでも年間2〜3件は起きる。
いじめの被害者、加害者の双方にとって重要なことは、早期の対策だ。その点で、いま「出席停止」という制度が注目されている。出席停止は、学校教育法35条で定められた制度で、学校の秩序を維持し、ほかの児童・生徒の教育を受ける権利を守ることを理由に、問題のある児童・生徒の出席を制限するというものだ。
出席停止の要件は、「ほかの児童の教育の妨げになること」と「性行不良であること」の2つ。性行不良とは「他の児童に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える」「職員に傷害又は心身の苦痛を与える」「施設又は設備を損壊する」「授業その他の教育活動の実施を妨げる」などの行為である。
これまで教育現場では、いじめ問題に出席停止を適用することに慎重だった。加害者の学習機会を保障する「教育的配慮」や学校側の「事なかれ主義」によって先送りになってきた。だが、たとえば東京都品川区では、2012年から出席停止を積極的に運用する方針を打ち出し、区内の小中学校の全教員に出席停止の手順をまとめた「手引き書」を配っている。
出席停止の積極的な運用は、いじめの抑止力にはなるだろう。同じように、暴行や窃盗などの被害があれば、状況に応じて警察にも相談すべきだ。子ども同士のトラブルだとして、保護者や学校関係者が、警察への届け出を控えるケースもみられる。
11年10月、滋賀県大津市の中学2年生の男子生徒が、陰惨ないじめを受けて自殺した。この事件ではいじめ自殺が起きた後の12年5月に、加害生徒のひとりが女性教師の小指の骨を折るなどの暴行をしていた。ところが学校側は「教育的配慮」として警察に被害届を出さなかった。
これは現実から目をそらした甘い対応だと言わざるをえない。いじめがなくならないのは、子どもたちがその行為を悪いことだと思っていないからだ。悪口を言う。叩く。無視する。物を盗る……。ふざけているだけだと思っている。これには早い段階での指導が必要だ。教師が注意してもエスカレートするようならば、外部の力を借りなくてはいけない。
「教育的配慮」や「事なかれ主義」は、被害者の救済を遅くするだけでなく、加害者が反省し、更生する機会を奪ってしまう事態を引き起こしかねない。甘い対応は、誰のためにもならない。それは私の30数年間の教員経験から、確信をもって言うことができる。
いじめからの緊急避難としては、転校という手段もある。学校教育法では「一定の手続を経て、関係市町村教育委員会間の協議が整えば、他の市町村等の学校にも就学することができる」と「区域外就学」を認めている。これは教師にとっては敗北だが、本人や両親が希望するならば、すぐに転校の手続きをとってくれるはずだ。子どもを守るためには、躊躇せずに対策を講じてほしい。