いじめの実態、アンケートではつかめず「実効性ある対策を」/神奈川

いじめの実態、アンケートではつかめず「実効性ある対策を」/神奈川
カナロコ 2013年4月14日(日)7時0分配信

 湯河原町立湯河原中学校2年の男子生徒(13)が自殺した問題で、生徒が受けていたとされるいじめは、学校が繰り返し実施してきたアンケートではつかめていなかった。大津市の中2自殺問題が発覚後、県内の各教育委員会はアンケートを工夫するなどして実態把握に努めているが、いじめによる自殺で子どもを失った遺族らは「教師と子どもの信頼関係こそ重要」と、手法以上に意識の改革を求めている。

 昨年11月に結果が公表された県教委のいじめ緊急調査で、4〜9月に県内の公立小中高校などで把握されたいじめは4797件。2011年度1年間の1・12倍で、このうち「生命や身体の安全が脅かされる重大な事案」は10件だった。

 「回答しやすいよう無記名に」(横浜市)、「並行して面談も行う」(川崎市)、「いじめ以外の質問も設ける」(相模原市)など、各教委は子どもに負担をかけない方法も模索しながら実態を把握できるよう腐心している。

 湯河原中は無記名のアンケートを「2カ月に3回程度」実施。何らかの情報が書き込まれていれば、記名式のアンケートを再度行っていた。学校関係者は「過去にはいじめを把握し、対応したケースもある」としているが、今回は生徒が自ら死を選ぶまで、いじめが明らかにならなかった。

 アンケートの限界を浮き彫りにする結果に、わが子がいじめの被害に遭った経験のある親は「児童や生徒との信頼関係があってこそ」と訴える。

 「真実を書けなかった原因は何なのか。それを調べなければ対策は講じられない」。いじめによる自殺で3年前に次男=当時(14)=を失った川崎市の男性(48)は指摘する。

 「弱さを見せたくない」といういじめ被害者、実態を見ても「次は自分が標的にされるかも」とおびえる同級生…。「『何かあれば言え』というような上から目線のアンケートでは、子どもの複雑な思いを拾い上げることはできない」。篠原さんは教師に「子どもと同じ目線」に立った対応を求める。

 相模原市立中3年だった昨年、複数の同級生から暴力などのいじめを受けた男子生徒(15)は、学校でアンケートに記入しているところを加害生徒に見とがめられ、SOSの機会を奪われた。被害生徒の母親が望むのは、アンケートは帰宅後に記入させ第三者機関に送付するなど「メッセージを発信しやすい仕組み」だ。

 「アンケートだけにとらわれずに、いろいろな面から子どもの状況を把握していく必要がある」と指摘する横浜国大教育人間科学部の高木展郎教授は「学校と家庭が協力し、いじめをなくす努力を続けるしかない」と強調する。

 次男を失った男性は訴える。「子どもたちは今、崖っぷちにいる。一刻の猶予もない。実効性のある対策を」

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする