暴力的指導の有無焦点に 秦荘中柔道事故、14日判決
京都新聞 2013年5月13日(月)9時39分配信
滋賀県愛荘町の秦荘中で2009年、柔道部員の村川康嗣君=当時(12)=が死亡した部活動中の事故で、遺族が町と柔道部の元顧問(30)に約7600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が14日、大津地裁(長谷部幸弥裁判長)で言い渡される。遺族側は、元顧問の日常的な暴力的指導と、町側の責任に加えて校長個人の責任も認めるよう主張しているが、町側は否認している。
遺族側は、元顧問は中学生への指導に関して知識も経験もなかったと主張。日常的に柔道部員に平手打ちなどの暴力的な指導を行っていたとしている。さらに、元顧問の採用に関して校長は適性を確認せず、安全指導の研修などを実施しなかったと主張している。
遺族側の代理人は、全国の学校で起きている柔道事故の背景に、現場での未熟な指導があると指摘した上で「校長の指導監督責任が明確になって初めて、採用やその後の指導の重要さが認識され、再発防止につながる」と話す。
訴状によると、遺族側は元顧問について、初心者の村川君に対して経験者と同じ練習をさせ、ふらついた状態になっても乱取りを続け、部活動の安全配慮義務を怠ったとしている。校長は元顧問を監督せず、適切な指導をしなかったとし、それぞれの過失が村川君の死亡と因果関係があると主張している。
町側は、元顧問の安全配慮義務を怠った過失を認めつつ、暴力的指導については否認。校長は柔道部の練習内容を監督し、内容を変更させる義務まで負っていたとはいえず、元顧問に対して、部活動中に部員が直接、頭を打つことがないよう指導していたなどとして争っている。
元顧問側は初心者として配慮した練習を行わせていたなどとし、暴力的指導を否認。部員を平手でたたくことはあったが、程度は軽く、大会前などに気合を入れるためだったとしている。
町側は昨年1月、元顧問の安全配慮義務について過失を認め、損害賠償に応じる姿勢を示した。同9月、町側が示した和解案について、元顧問の暴力や校長の責任の認定をめぐって遺族側と折り合いが付かず、協議は決裂した。
<秦荘中柔道事故>柔道部の村川康嗣君が2009年7月、部活動の練習中に意識を失い、約1カ月後に急性硬膜下血腫で死亡した。町は10年2月に事故を検証する第三者委員会を設置。第三者委は同7月、初心者に対する「過酷な練習が原因」とする報告書をまとめた。遺族側は報告書に町や学校の責任を明記するよう求めたが、町は「司法判断を仰ぐことが適正」と判断。遺族は11年3月、提訴に踏み切った。滋賀県警は12年3月、遺族の告訴に基づき、業務上過失致死容疑などで、校長と元顧問を書類送検した。