奈良の中1女子自殺 生徒アンケート 「いじめ」証言40件以上

奈良の中1女子自殺 生徒アンケート 「いじめ」証言40件以上
産経新聞 2013年8月16日(金)7時55分配信

 ■遺族 きょう結果公表

 奈良県橿原(かしはら)市で市立中1年の女子生徒=当時(13)=が今年3月、同級生の無視などに「これはいじめ。死にたい」と漏らした後に自殺した問題で、学校側が実施した生徒アンケートに、部活動の先輩から暴力を受けていたことなど、いじめを証言する記述が40件以上あることが15日、分かった。遺族は16日に結果を公表する。「二次被害の恐れがある」としてアンケートの開示を拒んできた市教育委員会は、多数の証言がありながら「自殺との関係は低い」と表明。遺族は対応を批判している。

 アンケートによると、いじめを直接見聞きしたという情報は、所属していたソフトテニス部の先輩からの暴力が十数件、クラスでの親友グループからの無視、仲間外れが十数件の計20件以上で、伝聞情報などを含めると40件以上に上った。

 ある生徒は「テニスコートで先輩からひざでおなかを殴られていた」と記述。別の生徒は「当時の2年生にけられたり殴られたり」と書いた。さらに別の生徒2人は「先輩からいじめを受けていた」などと、明確に「いじめ」という表現を使った。

 クラス内での情報では、「いつも一緒にいた3人からはみご(仲間外れ)みたいにされて(略)涙を流していた」「3人から無視されたり避けられたりしていた」などがあった。

 ある生徒は、自殺の原因について「一番はやっぱりクラスの友達のことであったり、暴力のことであると思います」と記していた。

 自殺前日には、女子生徒が部活動中にテニスコートの砂でお墓を作り、「『私が死んだらここに入れて』と言っていました」という記述もあった。

 同市の吉本重男教育長は6月、アンケートについて「いじめをうかがわせる回答があった」としながら、「自殺との因果関係は低い」と否定。学校も「家庭の悩みを聞いている生徒もおり、自殺の原因は分からない」としていた。

 アンケートは5月中旬、2年と3年の計約450人に実施。遺族の再三にわたる要望の末、7月下旬に遺族に開示された。

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奈良・中1自殺 遺族が会見「学校には二重の意味で裏切られた」
産経新聞 2013年8月16日(金)20時7分配信

 奈良県橿原市で市立中1年の女子生徒=当時(13)=が3月、同級生に無視され「これはいじめ。死にたい」と漏らした後に自殺した問題で、女子生徒の両親とその代理人が16日、奈良市内で会見。学校が実施した生徒アンケートにいじめを証言する記述が40件以上あったことついて、母親(44)は「この結果で学校側がいじめはなかったと結論づけるなら、いじめに対する感度が相当低く、再発防止は難しい」と訴えた。

 アンケートは5月中旬、2年と3年の計442人を対象に無記名で実施。「先輩からひざでおなかをなぐられていた」「学校に行きたくない。などといっていた」など、クラスの同級生による無視や部活での暴力を見聞きしたとする回答が寄せられていたことが判明している。

 両親は7月に市教委からアンケート内容を開示され、母親は記述を読んだときの思いを「ショックだった。一人でポツンとしていたとか、しゃべらなくなっていたとか、家では感じられなかった学校の様子を想像するとつらかった」と振り返った。

 両親は「大けがを負うようないじめではなかったようだが、クラスでの度重なる無視などは孤立感や孤独感を痛烈に与え、生きる力をそいでいったのは明らか」と指摘。「学校がいじめを見て見ぬふりをしただけでなく、真実を隠そうとしているとしか受け取れない対応には、二重の意味で裏切られたと感じている」と話した。

 同席した佐藤真理弁護士は「学校側は何が侵害になるのかを具体的に指摘せず、いたずらにプライバシーを強調している」と学校側の姿勢を批判した。

 両親は今後、市教委が両親の要望を拒否して立ち上げた調査委員会について、8月下旬にも県教委をまじえた協議を要請。両親の意向に沿った委員の選任などを求めたいとした。

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奈良の中1女子自殺 市教委 「いじめと因果関係低い」
産経新聞 2013年8月16日(金)7時55分配信

 生徒アンケートにより、暴力などのいじめを見聞きしたとする証言が40件以上記述されていたことが判明したが、橿原市教委は「いじめと自殺の因果関係は低い」との見方を示す。これは女子生徒が自殺前日に無料通信アプリの「LINE(ライン)」で母親(44)に殴られたことをうかがわせるやり取りを行っていたためだとされる。だが母親は「しつけの範囲で、手などをたたいたことはあっても殴ったことは一度もない」と反論している。

 女子生徒は自殺前日の3月27日夜、「ほんま、なに? 普通殴らんやろ 意味わからんとこでいつも切れんなや 私にいちいち当たらんといて もー、疲れた」と書き込んでいた。これに対し友達が「お母さん?」と尋ねたところ、生徒は「そう」と返していた。このため学校と市教委は母親に殴られたことによる「家庭の問題」との見方を強めているとされる。

 しかし、母親によると、生徒は自殺3日前に、いつものように母親の職場を訪れ、その後一緒に買い物をしたほか、翌日も職場で昼食を一緒にとっている。自殺前夜も変わった様子はなく、後から分かったことだが、母親の目の前で、そのLINEの書き込みは行われていたという。

 いじめと自殺の因果関係が低いとする見解について市教委は15日、産経新聞の取材に対し「自殺直後の教諭や生徒たちからの聞き取り調査で、いじめに関する報告が出てこなかったため」と書面で回答した。

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