<大阪府立高入試>採点ミス続発 私学対抗策が裏目に

<大阪府立高入試>採点ミス続発 私学対抗策が裏目に
毎日新聞 2013年8月19日(月)0時16分配信

 今春の大阪府立高校入試で、採点ミスが多数発覚した。子どもの人生を左右しかねない事態を受け、府教委はチェック態勢の強化など再発防止策の取りまとめを急ぐ。採点業務の負担増も背景として指摘されており、ミスの急増は、激化する私立高との生徒獲得競争の副作用という側面もありそうだ。

 「ミスがあってはならないが、日程的にはしんどかった。採点で集中力が落ちてもおかしくなかった」。府立高の50代男性教員は今春の採点を振り返る。

 大阪府内では2011年度、私立高授業料無償化の対象生徒を広げたことで私学人気が高まり、あおりで府立高の3割に当たる45校が定員割れした。危機感を抱いた府教委は今春の普通科入試で、進路を早く決めたい受験生心理に応えようと、定員約3万人のうち約6400人を後期日程(3月中旬)から前期(2月下旬)に前倒しし、前期の定員を約7700人に増やした。

 狙いは的中する。前期の受験生は前年の約1万7000人から、約4万2000人へと2.5倍増。前・後期の延べ人数も約5万2000人から約7万1000人に伸びた。

 しかし、この私学対抗策が、現場には負担を強いることになる。前期入試の2月下旬は、在校生の学年末試験の時期でもある。府教委が前倒しを発表したのが新学期直前の12年3月末だったこともあって日程調整は難しく、前期入試の翌日が学年末試験だった学校もある。

 結果として、ミス131件のうち85件は前期で起きた。府教委は7月にまとめた報告書で「選抜日程の公表時期を早めるなど各高校で選抜事務に集中できる環境整備に努める」との対策を明記した。

 また、入試問題の複雑さも一因と見られている。府教委がミスの内容を分析したところ、「配点の勘違い」が最多で5割近くを占めた。「配点2点の設問が並ぶ中で、一つだけある3点の設問を2点と見誤った」ようなケースだ。難易度に応じて配点を変え、学力を正確に把握しようという狙いが裏目に出た。府教委は来春入試で配点の並びを整理するよう改める方針だ。【深尾昭寛】

 ◇兵庫・京都では防止策

 今回の問題を受け、府教委は今後、答案用紙をコピーして2部用意し、教員が2組に分かれて別々に採点して最後に照合することにした。他の都府県でも、さまざまな採点ミス防止策を講じている。

 兵庫県では2009年、過去6年間で約3600件のミスが判明した。県教委は、詳細な採点基準を作る▽解答欄の並べ方を整理する▽設問ごとの配点を簡易化する−−などの再発防止策を導入した。10年度以降、ミスは見つかっていないという。

 京都府教委は、設問ごとの配点を原則同じ点数にして集計しやすいよう工夫。東京都教委は各校共通の実施要領を作り、1枚の答案を最低3回チェックするよう定めている。

 【ことば】大阪府立高校入試の採点ミス問題

 全府立高の3分の1の57校(特別支援学校を含む)で計約130件のミスがあり、うち3校で8人が誤って不合格とされていた。大手前高(大阪市)で5月、新入生から採点済みの答案の情報開示請求があり、教諭がミスを発見したのが発端。府教委が全校調査を指示したところ、次々と見つかった。府の職員採用試験や同市立高入試でも再点検の結果、合否に影響するミスが相次いで発覚した。

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