東京五輪 「体罰根絶」7年後見据え、スポーツ指導改革
産経新聞 2013年9月22日(日)7時55分配信
2020年東京五輪開催に向け、トップアスリートの育成が課題となるなか、文部科学省は来年度から暴力根絶を主としたスポーツ指導改革に乗り出す。コーチやトレーナー、医師らが連携する「開かれた指導体制」や、学校の運動部活動に外部指導者の活用を検討する。また、第三者機関が被害相談も受け付け、選手が安心して競技に打ち込める環境を整える。来年度の概算要求に関連予算計約8億円を盛り込んだ。
大阪市立桜宮高校や柔道女子日本代表などスポーツ指導で暴力事案が相次いだことを受け、文科省は今年4月、「スポーツ指導者の資質能力向上のための有識者会議」を設置。7月に出された報告書では指導における不適切な言動の背景に選手・チームとコーチの閉鎖的な関係があるとした。
文科省の担当者は「柔道女子日本代表の暴力問題でも、選手を支える多くの人が暴力を見ていたはずなのに口出しできなかった。選手のために議論できる雰囲気が必要」と話す。
有識者会議の提言を受け、文科省は来年度から、指導の場に多様な関係者の意見が浸透するような体制を整える。
具体的には、都道府県体育協会や日本スポーツ振興センター(JSC)などから、地域スポーツ、ナショナルチームの現場にコーディネーターを派遣。コーチや家族、トレーナー、医師、教員ら関係者を研修し、連携を促す方針だ。
教員の減少や高齢化が進む学校の運動部活動では、地域のスポーツ指導者を活用した指導体制を整える。
来年度から全国の教育委員会に、地域のスポーツ指導者の確保やデータベース化、体罰防止などの研修会を委託したい考えだ。
文科省は「日本では運動部活動がトップアスリートを輩出する土台になっている」と指摘。「生徒の力を引き出すには体罰根絶が大前提。外部指導者には部活が教育の一環だと理解してもらいたい」と話す。
暴力被害の相談体制も充実させる。文科省は年内にもJSC内に弁護士や臨床心理士らで構成する第三者機関を設置したい構えだ。
相談を受けた事案について調査し、競技団体などを通じて処分や改善勧告を行う仕組みを検討。文科省は「選手が安心してスポーツに打ち込める環境を整え、競技力向上につなげていきたい」としている。