「人間の盾」になることを拒んだ警護官ら…「車の壁」バスの中に鍵を放置

警察と高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が、尹錫悦(大統領)の逮捕状執行に乗り出した15日朝、尹大統領の漢南洞(ハンナムドン)官邸への進入を阻止する人はいなかった。裁判所が発行した令状執行を防ぐ名目がないだけでなく、ややもすると法的処罰を受けるかもしれないと判断した警護処職員のほどんどが、尹大統領と「強硬派」のキム・ソンフン警護処次長に背を向けたためだ。 警察と公捜処が設置した共助捜査本部(共助本部)は同日朝7時32分頃、バスの壁で塞がれた1次阻止線を突破した後、2次阻止線を通り過ぎ、8時5分頃に官邸前の警戒所に到着した。今月3日に1回目の逮捕状執行を試みた時とは異なり、警護処の職員たちはスクラム(人間の壁)を組んでおらず、迂回して進入する共助本を制止しなかった。公捜処と警察が車の壁を越えて前進する瞬間、警護処職員のほどんどが道を開ける姿がカメラに捉えられた。はしごを使って官邸前を塞いだ「バスの壁」を乗り越えた警察がバスのドアを開けると、中に車のキーが置いてあった。クレーンとレッカー車を動員しなくても、車の壁は簡単に崩れた。 キム・ソンフン警護処次長は同日未明まで、「逮捕状の執行を阻止しなければならない」と職員たちを急き立てたという。しかし、部長級以下の中間幹部と警護官の多くは、すでに逮捕状の執行を阻止すべきではないという立場に転じた後だった。警護官の大半が自分の勤務位置を守るか、官邸内の待機棟に留まっていたという。一部の職員たちは休みを取る方法で指示を拒否した。 警護処内外からは、多くの警護処職員たちがこのような対応をしたのは、尹大統領弁護団による逮捕状執行をめぐる異議申し立てが裁判所で5日に棄却され、これ以上自分たちの行動に法的正当性がなく、逮捕を阻止して特殊公務執行妨害容疑で処罰された場合、個人が甘受しなければならない不利益が大きいという点を考慮したためとみられている。 警護処の事情に詳しい与党関係者は「職員たちは法的境界線を越えない線で対応すべきだと判断した」とし、「(特殊公務執行妨害で)逮捕された場合の身辺上の不利益と、年金受領に支障を来す可能性も無視できなかっただろう」と伝えた。令状執行を妨害した場合、民事・刑事上の責任を問うことができると警告公文書を送り、協力する職員は善処すると言った公捜処と警察の「和戦両面術」も影響を及ぼしたものとみられる。 逮捕組が入ってきたら「武力を使ってでも阻止しろ」という尹大統領と、「(尹大統領夫人の)キム・ゴンヒ派」として知られるキム次長に対する不信感も大きかったという。特に、尹大統領が警護処幹部らと11日に昼食を共にし、「捜査機関の2回目の逮捕状執行時に武力使用を検討せよ」と指示した事実が明らかになり、警護処内部の動揺がさらに激しくなったという。尹大統領の弁護人であるユン・ガプクン弁護士が13日夕方、警護処の職員たちを集めて「警察官を逮捕せよ」などの発言をしたことも、反感を買ったものとみられる。警護処の事情に詳しいある関係者は「キム次長は逮捕状の執行阻止をあたかも反国家勢力との戦いと考えているようだった」とし、「職員がそれに同意するのは難しかっただろう」と語った。

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