窃盗疑惑で53生徒から指紋…全員“シロ” 茨城の県立高、とんだ修学旅行
2008.12.25 01:05 産経新聞
茨城県立大子清流高(同県大子町)2年の男子生徒全53人が先月、修学旅行で乗ったフェリーで発生した現金窃盗の嫌疑をかけられ、第6管区海上保安本部坂出海上保安署(香川県)に指紋を採取されていたことが24日、分かった。同署は乗客の証言に基づき指紋を採ったが、生徒のいずれもの指紋が現金が盗まれた財布に残されていたものと一致しなかった。同署は「捜査中」として生徒の指紋は廃棄していないという。学校は「実質的に疑いが晴れた以上、生徒のため指紋を廃棄してほしい」としている。弁護士からは「見込み捜査だったのでは」との指摘も出ている。
関係者によると、11月18日午後9時ごろ、新門司港をめざし瀬戸内海を航行中のフェリー展望室で、20代男性客が落とした財布から現金約4万円が盗まれる事件が発生。坂出海上保安署は、男性客の「近くのいすに男子生徒数人が座っていた」との目撃証言に基づき、男子生徒全員の指紋提供を学校側に求めた。ほかの乗客には指紋提供を求めなかった。
捜査の影響で、フェリーは海上で約2時間停止。翌朝、港に到着後、53人の指紋採取が約3時間行われ、同日予定していた阿蘇山観光はキャンセルとなった。引率した大畠丈夫教頭は「証言した男性客が酔って周囲に言いふらし、多くの乗客がうちの生徒が犯人と思ってしまった。指紋提供を断れば生徒の不名誉になると思った」と話す。
同27日に同署から、生徒の指紋が財布に残っていた指紋と一致しなかったとの連絡があった。同署は「捜査中」と、生徒の指紋を破棄していないという。
学校は県教委に事実を報告。旅行会社と相談し、謝罪文の要請や損害賠償の請求を検討したが「任意捜査に応じた以上難しい」と、さらに捜査状況の提供を求めるにとどめている。
同署は「先生の理解を得て指紋を採取した。目撃情報は重視しなければならない」としている。
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日本弁護士連合会子どもの権利委員会・影山秀人委員長の話
「生徒たちを犯人と疑う情報は多くないのに、指紋を採るのは見込み捜査ではないか。生徒全員が指紋提供に応じていることからも任意性は疑わしく、海保は捜査手法が妥当か検討してほしい」