「政治とカネ」の問題はなぜ無くならないのか。ジャーナリストの鮫島浩さんの著書『政治家の収支』(SBクリエイティブ)から、政治団体や政党支部にカネが流れる仕組みを解説する――。 ■政治家個人の財布と、政治資金の財布は別 「政治とカネ」を語るうえで、よく混同されるのが政治家個人のお金と、政治家が管理している政治団体や政党支部のお金の違いです。ここまで紹介した年2回の期末手当を含む歳費、調査研究広報滞在費(旧文通費)は政治家個人へ入るお金です。以降は、主に、政治団体や政党支部に入るお金について、説明したいと思います。 その説明をするために、2023年から2024年にかけて話題になった政治資金パーティー収入の裏金問題の話を、簡単に触れたいと思います。というのも、この問題でも、政治家個人が受け取ったお金なのか、政治家が管理する政治団体が受け取ったお金なのかが、曖昧となっていたからです。 もし、派閥の政治団体から、政治資金パーティー収入のキックバックを、政治家個人が寄付として受け取っていたとすれば、これは違法行為です。政治資金規正法上、政治家個人は寄付を受けてはいけないからです。 寄付はすべて政治団体が受けるとして定められています。政治団体がお金を受け取り、それを議員の政治活動に使う。その代わり、政治団体はお金の出し入れを政治団体の政治資金収支報告書にすべて記載し、公開しなければなりません。 ただし、政治団体が受け取った以上、この収支報告書に記入しないと「不記載」という違法行為になります。寄付の総量や1人あたりの上限といった規制はあるのですが、規制の範囲内でなら、政治団体が献金を受け取ってもいいとされています。 ■自民党「裏金問題」で露呈した理不尽な構図 くだんの裏金問題のお金について、ある議員は「金庫にしまっていました」、別の議員は「引き出しにしまっていて忘れていました」とそれぞれ弁明しました。しかし、そのお金が政治家個人でもらったのか、政治家が管理する政治団体がもらったのかをはっきりさせませんでした。 これは、個人がもらったなら、もらった時点で違法行為ですし、政治団体がもらったのなら、政治資金収支報告書に書いてないことが違法行為にあたるからでしょう。 そこで、こうしたケースでは、政治団体がもらっていたが、政治資金収支報告書に記載していなかった、という言い訳がたびたび使われてきました。政治団体の代表は議員ですが、会計責任は秘書など別の人が担当しています。 議員は「会計責任者が書き忘れた」という理由で、責任を逃れるのです。結局、会計責任者だけが罪を問われるという、理不尽な構図になっており、政治資金パーティー収入の裏金問題も、ほぼそのようになりました。