1447人の答案でミス 神戸の採点ミス問題

1447人の答案でミス 神戸の採点ミス問題
2009年4月25日19時45分配信 産経新聞

 「石炭」が「石灰」でも◯で、「国際連合」が「国連」は×。今春の兵庫県立高校入試で、開示請求を行った1人の受験生の答案から採点ミスが見つかった問題は、その後の全受験生計2万4880人分の答案の再点検で1447人もの答案からミスが見つかる事態に発展した。学力試験を実施した県立高校の約8割にあたる122校が何らかのミスをしていたというずさんな実態をなぜ招いたのか。県教委は合否には影響がなかったとしているが、今も保護者や生徒からの問い合わせは相次いでおり、不信感はぬぐえていない。

■30点の減点も

 兵庫県教委によると、ミスは学力検査を行った142校3分校のうち、約84%に当たる122校で計1447人の答案から計1522件見つかった。中には受験生の5人に1人の割合でミスがあった高校もあった。最大で30点が本来の得点から減点されていた生徒もいたが、正しい得点をもとに順位の変動を確認した結果、合否には影響がなかったという。

 ミスの内訳は記述式問題で部分点を積算し忘れるなどの集計ミスが645件、漢字を間違っているのに気付かないなど不正解を正解としたのが559件、正解を不正解としたのが318件だった。

 不正解を正解とした具体例としては、国語で「一般都市」が正しい答えのところを「一船都市」でも正解にしたり、社会では「石炭」を「石灰」でも正答としたり、「大宝律令」を「大宝律分」でもマルとするなど、初歩的なケアレスミスがぞろぞろ。英語では「she」を「he」でも正解としているケースもあった。記者会見で大西孝・教育長は「教員の意識が甘いといわざると得ない」と謝罪したが、まさに採点の現場はどうなっているのだと言いたくもなる。

■過酷な採点作業

 こうしたミスが多発した原因はどこにあったのか。兵庫県では平成3年に県立農業高校で夜に教職員が答案を改ざんする事件が発生。これを受けて、翌年から採点の期限を原則、試験当日とすることを入学者選抜要綱に盛り込んだ。

 不正防止のための策だったが、教員らの過度の疲労を生み、今回の大量ミスの要因となったとの声もあがっている。40人以上の答案でミスが発覚したある高校では、教員らは試験当日の午前7時半に登校。採点作業がすべて終了したのは深夜の午前0時だったという。16時間を超す勤務で、教員1人につき延べ300枚近い答案を採点したという。

 また、採点作業は3人の教員が違う色のペンで行っているが、解答用紙には配点を記入する欄が1つしかなく、「色が混ざって見にくい」と、解答用紙の様式を問題点に挙げる声もある。

 さらに兵庫県立高校の一般入試では、合否判定の半分は内申点で評価されており、ある大手学習塾の講師は「内申点の占める割合が高いことも、気が緩む原因なのでは」と指摘する。

■過去にもあった?

 県教委では今回の大量のミス発覚を受けて、当日採点の見直しや、外部委員会を設けて再発防止に取り組むとともに、過去5年分の答案について、すべてを再点検する方針を示している。しかし、先の塾講師は「これまで発覚していなかっただけで、過去にもミスがあるはず。非常に不信感を抱いている」と話した。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする