「布川事件」無罪確定の公示失念 担当者が手続き怠る 水戸地裁

1967年に茨城県利根町布川で起きた強盗殺人事件「布川事件」を巡り、水戸地裁は28日、2011年に水戸地裁土浦支部で確定した再審無罪判決について、刑事訴訟法で定められた判決の公示をしていなかったと発表した。公示を官報や新聞に掲載する必要があったが、担当者が手続きを失念していたという。 水戸地裁によると、24年11月に一般の人と報道機関から問い合わせがあり、職員に聞き取りなどをしたところ、公示していなかったことが発覚した。職員が手続きを忘れ、チェック体制も働かなかったことが原因という。 布川事件では、男性(当時62歳)が殺害され現金も奪われた。茨城県警は約2カ月後に桜井昌司さん(23年に死去)と杉山卓男さん(15年に死去)を別件逮捕後に強盗殺人容疑で再逮捕し、78年に最高裁で無期懲役が確定した。09年に再審開始が確定し、11年に再審で無罪が確定していた。 水戸地裁は今後、公示の手続きを進める。桜井さんと杉山さんの遺族には経緯を説明し、謝罪を申し入れた。水戸地裁の河本雅也所長は「13年の長きにわたり、刑事訴訟法に定める手続きが取られていなかったことは誠に遺憾。お亡くなりになってからの手続きとなり、申し訳ない」とコメントした。 弁護団の谷萩陽一弁護士は毎日新聞の取材に「裁判所が負うべき名誉回復の機会が長年実施されていなかった問題は大きい。ただ、弁護団としてもお二人の生前に気づくことができなかったことは悔やまれる」と語った。【斉藤瞳、西夏生】

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