東京地裁から解散命令を下された世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が16年前、教団の解散を想定し、資産を移す先として北海道帯広市に本部を置く宗教法人「天地正教」を指定していたことが、地裁の決定内容から判明した。教団は、毎日新聞の取材に対して、天地正教が実質的な傘下にあることを認めており、解散後も別の宗教法人格を使って活動を続けようとしていた可能性がある。 地裁の決定内容によると、旧統一教会は2009年6月、責任役員会と評議員会を開き、解散後の「残余財産」について「帰属先は天地正教とする」と決議した。霊感商法を巡って教団傘下の会社の社長が逮捕された事件があり、教団が「コンプライアンス宣言」を出した時期だった。 宗教法人法は、解散に伴う清算手続きで、債務弁済後に残った残余財産の行き先を3通り定める。このうち最も優先されるのは、解散する法人が事前に設けた規則の定めだ。教団は文化庁に届け出ている規則で「国もしくは地方公共団体、または他の宗教法人のうち、責任役員会及び評議員会の議決を経て選定したものに帰属する」としていた。 09年の決議は、この規則に基づいて帰属先を「天地正教」とするものだった。 天地正教は1987年に宗教法人の認証を受けた。つぼや印鑑を高額で売る「霊感商法」被害を訴える声が上がり、88年6月には全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が文部省(現文部科学省)や北海道に対して法人格の取り消しを求めていた。 全国弁連の阿部克臣弁護士は「刑事事件などを受け、16年前から解散させられる事態を想定して手を打っていたことが明らかになった。解散命令が確定しても資産が天地正教に移れば、教団は別の法人でこれまで同様の税制優遇措置を受けながら活動を続けられることになる」と指摘する。 教団の勅使河原秀行総務局長は取材に「天地正教は法律上は別の法人だが、教義を共にし、当教団と表裏一体のような存在ではある。ただ、今の時点で何か資産を移そうとか、天地正教として活動を続けようという議論はしていない」と話した。【春増翔太】