新生活に胸躍らせる春。各大学の入学式などでは新入学生を対象にしたサークル勧誘も盛んに行われる。 大学生になると増えるのが、サークルやゼミの仲間との飲み会、そして新入生歓迎会、いわゆる「新歓コンパ」だろう。しかし、新歓シーズンには注意も必要だ。 大学での性暴力は「飲み会の場」が最も多いとされる。加害者の多くは学内の同級生、先輩だ。被害を防ぐためには何に気をつければよいのだろうか。【中嶋真希】 ◇「性的同意の確認」と助け舟を 性暴力をなくすために活動している慶応大の未公認学生団体「Safe Campus(SC)」が2020年に実施した調査では、「同意なく体を触られる」の80%、「同意のない性行為」の77%、「性的発言・性的なジョーク」の60%が「飲み会の場」で発生していた。また、22年の調査でも飲み会での性被害が最も多かった。 SCは、慶大で学生自治を担う「全塾協議会」と性暴力を防ぐためのワークショップを共催し、協議会傘下の部活動やサークルの代表者らに参加を義務付けた。受講するだけでなく、テストにも合格しなければいけない。 そのワークショップの中で強く訴えているのが、相手の明確な「イエス」を確認する「性的同意」と、周囲が性的被害を見て見ぬふりをせず、被害者に助け舟を出すことの重要さだ。 例えば、もし知らない人が被害にあっていたら、知人のふりをして声をかけるのもいい。飲み会のような場なら、困っている人に声をかけ、別の話題で盛り上がり、加害者を輪に入れないということもできる。 ほかには、その場を撮影して証拠を残したり、「それはハラスメントだ」と加害者に伝えて直接介入したりと、さまざまな方法がある。残した証拠は、被害者の意思を確認せず、勝手に公表しないことも重要だ。 いじめやハラスメントに居合わせた際に、積極的に行動する人を「アクティブ・バイスタンダー」と呼ぶ。「行動する傍観者」という意味だ。 SCの主要メンバーである慶大湘南藤沢キャンパス(SFC)所属の2年生は「被害者が声を上げるのは、難しいことがある。周囲が助けることが大事」と指摘する。 ◇「就活」きっかけの被害も SCは慶大のサークルや部活内での集団性的暴行、盗撮行為が明るみに出た際に、再発防止のため19年に学生有志が集まって発足した。サークルの代表者らにワークショップの受講を義務づけた活動は全国の大学でも珍しく、注目された。 24年には、ワークショップをYouTubeで公開。性的同意について解説したハンドブックを作成して配布するなど、積極的に発信してきた。 大学側も手をこまねいているわけではない。性暴力防止の対策について慶大の広報室に取材すると、「ウェブサイトや学生団体の手引、各学部の新年度ガイダンスなどで注意喚起をしているほか、性暴力を含む大学生が陥りがちなトラブルの対策についてオンデマンド形式のオンライン授業を開設している。すでに性暴力に関する注意喚起を行っており、今後も続けていく」という回答があった。 大学生の性被害は学内だけで起こるわけではもちろんない。就職活動がきっかけとなる事案も相次いでいる。 今年1月には電機大手NECが、就職活動中の学生にわいせつな行為をしたとして社員(当時)が逮捕されたことを受け、学生との面会をオンライン、会社施設、大学構内に限定し、飲酒を禁止するなど採用活動指針を見直した。 SCのメンバーは「就職活動での性暴力の危険性などについても、大学側から学生にしっかり伝えてほしい」と呼びかけている。