3月31日、元「SMAP」中居正広の女性トラブルをめぐり、フジテレビの第三者委員会が調査報告書を発表した。報告書では、今回のトラブルで被害にあったのは元フジテレビのアナウンサーだとしている。 中居が「守秘義務」を主張したため、報告書には事件そのものの詳細な内容はなにも書かれていないが、中居による「性暴力」は認定されている。この結果を踏まえ、中居が「不同意性交罪」などで有罪判決を受ける可能性はあるのか。 元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士に話を聞いた(以下、「」内はすべて若狭氏)。 「今回の報告書では、性加害があったと積極的な認定をしていますが、個人的にはちょっと、これだけで断定的に認定するのは、現段階では行きすぎの感があります。 第三者委員会の報告書がこれだけ明確に認定しているので、この段階で、刑事告発・刑事告訴自体は可能だと思いますが、それ以上に、起訴したり、有罪にできる可能性が高いとは言い得ません。 なぜかというと、第三者委員会は、刑事責任を追及するという観点では調査していないんです。もちろん、検事ではなく弁護士が担当したので、それは当然なんですが。 第三者委員会の弁護士は、守秘義務を盾に、中居さん側から事件当日の話をヒアリングできなかった。こうした性的な問題については、当事者双方から話を聞くのが鉄則ですから、事実認定が踏み込んだものになっていないんです」 調査報告書(公表版)の26ページには、 ●被害女性によるフジテレビへの被害申告 ●被害女性に生じた心身の症状 ●被害女性と中居とのショートメールでのやり取り ●フジテレビ関係者間の報告内容、ヒアリング、客観資料 などをもとに、第三者委員会は「性暴力」を認定したとある。 「ショートメールでのやり取りには『具体性のある行為態様』が書いてあったようですが、これを中居さんが認めていたのかどうかは、まったく触れられていません。 要は、中居さん側の認識が、今回の報告書では全然浮き彫りになっていないんです。被害女性はPTSDになったり入院したりしているので、かなりの性加害だったと思いますが、さりとて、そのときの状況がまったく出ていないので、ちょっと “重み” がないんです」 今回の件が罪として成立しづらい理由のひとつとして、被害の発生日時も大きく影響するという。 「今回の案件は2023年6月2日に発生したものなので、『不同意性交罪』という罪がまだないんです。それまでは『強制性交罪』があったのですが、不同意性交罪は、7月13日から施行されましたので、今回の事案は、強制性交罪の適用が問題になります。 『不同意性交罪』だとすると、被害女性が性交に同意していないということで、犯罪の成立可能性は高くなると思いますが、『強制性交罪』だと、少なくとも性交を明確に拒絶している状況や拒絶の意思が証拠上認められる必要があります。 その意味では、ショートメッセージで、中居さんが被害者が性交を拒絶していたことなどの態様を認めているような記述があれば、犯罪として成立する可能性はグンと高まります。もし、具体的な記載がなければ、“かゆいところに手が届かない” ということになりますね」 被害女性との示談が成立している中居だが、もう罪に問われることはないのだろうか。若狹弁護士は「罪に問われる可能性はある」と可能性を示した。 「被害女性との示談書のなかに『刑事告訴をしない』という一文が書かれていることがあります。その場合は被害者による刑事告訴は難しいでしょうね。 ただ、第三者であるフジテレビが刑事告発することはできます。2017年まで『強制性交罪』は親告罪だったため、被害者本人の告訴なしに事件にはできませんでした。いまは非親告罪なので、被害者の告訴は不要です。 フジテレビの清水賢治社長は『人権侵害を許さない』と高らかに宣言しているじゃないですか。だったら、この件の刑事告発が初めの一歩じゃないかと思うんです。守秘義務というものは民事事件の発想で、刑事事件になると、そんなもの関係なしに捜査が入りますから。 実際に性加害の裏づけとなる証拠が出てきたら、これはまぎれもない犯罪ですよね。『強制性交罪』の証拠って、必ずしも押し倒したり暴力を振るったり殴ったりしなくても、認定されることがあります。 たとえば、自宅に呼んだマッサージ嬢に強制性交をして懲役4年の実刑となった俳優の新井浩文被告がそうです。被告は、押し倒したり殴ったりしていませんが、拒絶されているのをわかっていながら性交に及んだことで有罪になりました。 基本的に『強制性交罪』は懲役5年以上、20年以下で、原則実刑です。ただ、今回の中居さんのケースでは、示談が一度成立しているので、仮に有罪となったとしても執行猶予がつくと思います」 『人権侵害を許さない』と宣言したフジテレビは、はたして刑事告発するだろうか――。