「学校の先生が国を滅ぼす」元校長の一止氏に聞く

「学校の先生が国を滅ぼす」元校長の一止氏に聞く
2009年11月15日18時33分配信 産経新聞

 都道府県・政令市の教育委員会から「指導力不足」と認定された公立小中高校教員が文部科学省の調査で平成20年度は306人(前年度比65人減)だった。4年連続で減少したというが、約90万人の教員に対し認定数はごくわずかで、実態が本当に把握されているか疑問の声がある。大阪府の元公立校校長で『学校の先生が国を滅ぼす』(産経新聞出版)の著者、一止(いちとめ)羊大(よしひろ)氏に実態や処方箋(せん)はあるか聞いた。

 −−認定ゼロの教委もある。不適格な教員はもっと多いのでは

 「私の経験から言ってもとてもこんな数字では収まらない。指導力不足教員を大ざっぱに分類すると、(ア)単に教員として必要な知識・技能に欠ける(イ)言動に問題があり教育公務員としての適格性に欠ける(ウ)人格上に欠陥などがあり生徒・保護者・同僚などとの人間関係をうまく構築できない(エ)組合活動家によく見られるタイプで確信犯的に職務怠慢に陥っている(オ)何らかの理由で仕事に対する意欲を失っている(カ)精神疾患などの病気によって指導力を発揮できない(キ)私生活の乱れなどから職務遂行に身が入らない−など」

 −−対策は

 「研修などで最も改善が見込まれるのは(ア)のタイプ。他のタイプは研修程度では改善は困難だと思われる。信賞必罰を確立し、勤務評定を適正に行って淘(とう)汰(た)することが求められるが、信賞必罰は教員には最も縁遠い。これが一般企業などと決定的に違う部分だ。勤務評定は『勤評闘争』以降、形骸(けいがい)化された。新たな制度が導入され、例えば大阪府では『評価育成制度』を設け、評価と育成を視野にS、A、B、C、Dの5段階に評価する。制度がうまく機能すれば一定の効果が期待できる」

 −−校長や教頭、主幹教諭からの希望降任(降格)が過去最多となった

 「まず、すべての責任が校長に集中する学校の管理機構に問題がある。また教員は横並び意識が強く、他の人に指示命令をされたり指導されたりすることを極端に嫌う傾向がある。校長の言うことにさえ耳を貸さない教員が、教頭や主幹教諭の言うことを素直に受け入れないのは当然と言える。校長にしても教育委員会と所属職員との板挟みで、どんなに頑張っても問題が起これば責任を取らされるのは校長、という割の合わない立場。校長、教頭、主幹といっても給与面では他の職員とあまり大きな開きはなく、降任を希望する心理はよく理解できる。教員意識を変える方策の一つとして、教員を一定期間一般企業に出向させ、実社会で働くとはどういうことかを体験させることが必要ではないか」

 −−新人教員には

 「教員は、社会人としての基礎基本を身につけないまま『せんせい』として生徒の前に立つ。学校をダメにしているのは『教員の社会人・組織人としての基礎基本』が貧弱であることに主たる原因があると思う。辞令交付よりも前に服務規定、言葉遣い、服装に至るまで、組織で働くということはどういうことか、給与を受けて働くということはどういうことか、徹底的に身につけさせることが必要。研修を企画・実施する教育委員会にそのような問題意識が欠如している」

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