アダルトビデオ(AV)を制作する際に出演女性に契約書を渡さなかったなどとして、警視庁は、無職の祝大地容疑者(35)=埼玉県飯能市=を、AV出演被害防止・救済法違反などの疑いで逮捕した。捜査関係者への取材で分かった。 逮捕は14日。捜査関係者によると、逮捕容疑は昨年5月ごろ、20代女性とAV出演の契約を結ぶ際、法令が義務づける書面や契約書を渡さなかったなどというもの。祝容疑者は当時、動画制作を担う法人の代表だった。 女性は出演に際し、個人が特定されないことを希望し、顔がわからないよう編集を加えることを求めたという。祝容疑者は口頭で了承して契約内容を説明したが、契約書は交付されなかった。 制作されたAVは、女性の希望に反し、顔がわかる状態だった。女性のAVが公開されていることに気付いた知人から指摘を受け、女性はサイトから削除するよう求めたが、祝容疑者は「まだ売り上げをとれていない」などと応じなかったという。 同法は、映像の制作や配信をする側に対し、作品ごとに性行為の内容などを明記した契約書を交付するよう義務づけている。契約書が交付されなかった場合、出演者側は契約を取り消すことができ、制作者側には個人か法人かを問わず6カ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科される。(太田原奈都乃) ■相次ぐAV出演被害、相談は380件超 AV出演被害防止・救済法の施行から、まもなく3年が経つ。今も若い女性を中心にAV出演を巡るトラブルは絶えず、捜査関係者や支援団体によると、スカウトらによる女性のあっせん先は「性風俗店よりAVに流れる傾向だ」という。何が起きているのか。 同法は2022年6月に成立・施行された。警察庁によると、全国の警察による摘発件数は22年1件、23年11件、24年29件と増加傾向にある。