教員免許発給 刑罰歴審査、厳格化へ 都教委、公的証明書提出求める
2010年1月4日7時56分配信 産経新聞
東京都教育委員会が教員免許を発給する際、過去の刑罰歴の有無について本籍地の自治体が発行する公的な証明書の提出を求める検討に入ることが3日、分かった。昨年、執行猶予中の男性(25)が不正に教員免許を取得し、大田区の区立小学校で臨時教員として学級担任になっていた事案を問題視した。教員免許発給時には過去、禁固刑以上に罰せられたことがないとする宣誓書の提出が求められるが、真偽は申請者の自己申告のため、都教委は審査の厳格化を図りたい考え。都教委によれば、制度が導入されれば全国初。
横浜市でも昨年4月、女子中学生の着替えを盗撮して逮捕された同市立中学の男性教員が、採用試験を受けた平成14年に別の性犯罪で執行猶予中だったことが判明。関係者によると、大田区の男性臨時教師も性犯罪で執行猶予中だった。
教員免許は一般的に大学の教育学部などで教職課程を修めると都道府県教委から発給される。教員免許法では禁固刑以上(執行猶予中を含む)に処せられた者の取得を禁じているが、過去の刑罰歴は申請者の自己申告で判断され、「性善説による発給制度を改める以外に対策はない」と関係者は指摘する。
都教委では現在、正教員採用候補者選考の合格者にのみ、本籍地の市区町村から刑罰歴を記載した証明書を提出させている。しかし、男性のように臨時教員や非常勤講師の経歴詐称は見破れず、今回の問題も男性が10月に正教員候補者選考に合格して露見した。
臨時教員は、病欠や妊娠出産などで学校を休む教員の穴埋めのため短期採用されるケースが多いため、時間的制約から「採用時に煩雑な手続きを行うことは現実的でない」との声が大勢を占めているという。
20年度の教員免許発給数は都内で4万1614人。都が発給した教員免許を“証明書”に塾講師や家庭教師をする者も多い。学校以外でも類似の問題が起きた場合、都教委の教員免許への信頼性が揺らぎかねないとの指摘もあり、幹部は「都が全国の先鞭(せんべん)を付けるべき」としている。
高橋史朗・明星大教授は「団塊世代の退職に伴う穴埋めのため、臨時教員、非常勤講師を大量採用しないと学校が回らなくなっている。そのため臨時教員や非常勤講師の採用が野放しともいえる状況で、質の低下は否めず、今回の問題も起きた。教員免許の発給を含め、何らかの新しい対策が不可欠だ」と指摘している。