大和路密着:非正規教員 「腰据えて向き合えない」 高まる依存、弊害の声 /奈良

大和路密着:非正規教員 「腰据えて向き合えない」 高まる依存、弊害の声 /奈良
毎日新聞 2011年4月21日(木)16時0分配信

 期限付きの不安定な雇用形態で働く「非正規教員」が、県内の公立小中学校で増えている。県教委によると、02年度に392人だったのが、10年度は2・2倍の876人、全体に占める割合は12・8%に達した。県財政の悪化を背景にした人件費抑制策の一環だが、教育現場からは「腰を据えてじっくり子供と向き合うことができない」などと弊害を指摘する声が上がっている。【大久保昂】
 「当時は普通だと思っていたけれど、今考えれば大変でしたね」。奈良市立小の女性教諭(34)は、非常勤講師だった00〜02年度をこう振り返った。当時、小中学校など3、4校で書道の授業を担当。県東部の室生村(現宇陀市)で授業をした後、西部の大和高田市にマイカーで移動することもあった。
 それでも月収は最大で約20万円。そこから健康保険料や年金保険料が差し引かれる。夏休みになる8月は収入が途絶えた。さらに、子供たちと週に1度しか顔を合わせないため普段の生活態度をなかなか把握できず、「もっと深く知ることができれば、その子に合わせた教え方や教材が用意できたのに」と悔やむ。
 「臨時教職員制度の改善を求める全国連絡会」の山口正会長(54)は「子供と信頼関係を築くには一定の期間が必要。接触時間の短い非常勤講師などは子供を情緒面でサポートすることが難しく、力を出し切れずに終わる先生もいる」と指摘する。
 しかし、非正規教員への依存は高まる一方だ。40代の非正規教員の女性は5年前、出産と子育てによる約15年間のブランクを経て県内の公立小に復帰した。きっかけは、県教委からの突然の電話。病気休暇に入った教員の後任が決まらず、担任不在の状態が約10日間続いていた。子供たちからは「待ってました!」と歓迎された。「確保に苦労していたんでしょう」と推測する。
 県教委は「大阪府などでも需要が高まっており、取り合いになっている」と説明する。08年度以降、教員採用試験の2次試験で不合格になった受験者に対し、常勤講師での採用を打診するなど囲い込みを強化している。ただ、「不合格者に採用を打診するのは矛盾。人件費を抑制したいだけではないか」との批判も根強い。
 依存度が全国一高い沖縄県は、今年度の小中学校の正規教員採用数を前年度の約2・5倍に増やした。一方、奈良県教委は「採用試験の競争倍率を3倍程度は確保しないと、教員の質が維持できない」と大幅な採用増には慎重な姿勢だ。
…………………………………
 ■ことば
 ◇非正規教員
 2種類あり、常勤講師は1〜2年程度の期限付きで、給与水準は若干低いものの正規教員と同様にフルタイムで働き、学級担任などもできる。非常勤講師は限られた授業だけ担当し、給与は時給計算で支払われる。複数校を掛け持ちすることが多い。

4月21日朝刊

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする