橋下イズムの教育基本条例案 違法か独裁打破か
産経新聞 2011年12月23日(金)22時15分配信
大阪市長の橋下徹氏(42)が率いる「大阪維新の会」が大阪府議会に提出した教育基本条例案が教育界で論議を呼んでいる。「教育への政治関与」を目指す条例案には「政治的中立」を原則とする教育委員会制度を根底から問い直す条文が並ぶ。教育現場などからは反対論が噴出し、政府も条例案は違法との見解を表明した。だが、橋下氏と21日に対談した石原慎太郎東京都知事(79)も同調するなど教育現場の閉鎖的体質を打破する意義があると評価する声も強い。
■政府は違法と認識
「政治家や首長をばかにするような決定としか思えない」。橋下氏は21日、中川正春文部科学相と会談し、政府が条例案の違法性を指摘する答弁書を閣議決定したことについて強く批判した。同日、橋下氏と対談した石原氏も「教育を破壊的に改革することが必要だ」と、都としても条例化を検討する意向を示した。
条例案は、前文で「教育行政からあまりに政治が遠ざけられ、教育に民意が十分に反映されてこなかった」と現行制度を批判し、「政治が適切に教育行政における役割を果たさなければならない」と宣言する。
象徴的なのが、知事が府教委と協議して高校などに実現すべき目標を設定し、目標実現への責務を果たさない場合、教育委員を罷免できるとした規定だ。
地方教育行政法は、教育委員会の権限について、教育事務全般とする一方、首長の権限は教育予算や契約の執行などと明記しており、政府は16日、条例案は地教行法に違反するとの答弁書を閣議決定した。
■制度改革の必要性
教育は教育基本法などで「政治的中立」がうたわれ、それを実践する機関が首長から独立した教育委員会だ。委員は首長が議会の同意を得て5人程度を任命する。教育の専門家ではない地域住民が月1、2回の定例会で教育行政を行ってきた。ただ、実際に業務を行うのは教育長を中心とした事務局で「教育委員会は事務局の決定を追認するだけの名誉職」などと長年、形骸化が指摘されてきた。
慶応大の小林節教授は「問題教員を現場から排除できないなど制度が機能しておらず、制度を変える必要がある」と条例案に賛成した上で、「政治的中立という防波堤の陰で日本教職員組合(日教組)が、まさに特定党派の政治的な教育を行ってきた」と制度の“欠陥”を指摘した。
中川文科相も制度改革には理解を示し、改革の必要性という点では一致する。
■問題提起には評価
政治的リーダーシップか教育の中立性か。京都造形芸術大の寺脇研教授は「教育行政は結果が出るまで時間がかかるため、長期間かけて行うもの。その時々の民意に左右されてはならない」と条例案を批判。中立性に加え、教育の継続性確保の必要性を訴える。
文科省幹部も「教育委員会制度の形骸化というが、政治的中立を守るために教育委員会が存在しているという意味では、今まさに機能している」との見方だ。
だが、民意は無視できない。条例案について、府の教育委員は6人のうち橋下氏が任命した委員を含め5人が反発。可決された場合、辞職する意向を示していたが、維新の会が完勝した大阪ダブル選の結果を受け、修正案について協議することで合意した。中川文科相も「大阪で良い提起をしていただいた。国民的議論にしたい」と、問題提起については評価する。
明星大の高橋史朗教授は「橋下氏の手法を独裁と批判する声もあるが、教育現場では日教組の独裁があり、それを打破する歴史的意義はある」と話す。