コミュニティ・スクール 多様な価値観でいじめも解決 学校側抵抗、閉鎖性の壁
産経新聞 2012年8月21日(火)7時55分配信
いじめを受けていた大津市の中2男子が自殺した問題で、対応にあたった学校の閉鎖的な姿勢が批判されるなか、地域住民に学校運営について一定の権限を与える「コミュニティ・スクール(CS)」(地域運営学校)の必要性を指摘する声が教育界で高まっている。文部科学省は全小中学校での導入を促しているが、学校側の抵抗もあり進んでいないのが実情だ。
CSに指定された小中学校は、教育委員会に任命された地域住民ら10人程度からなる学校運営協議会を設置する。「学力を上げる」などの基本方針の了承や、運営や人事について校長や教委に意見を述べる権限が認められている。
全国コミュニティ・スクール連絡協議会会長を務める東京都三鷹市教育長の貝ノ瀬滋氏は「子供の問題は複雑化しており、学校だけで対応するのは限界がある。地域住民の多様な価値観を学校教育の中に入れていくことで、学力向上やいじめ、不登校などの問題解決にもつながる」と話す。
ただ、CSの指定は、各市町村教委の判断に委ねられている。文科省によると、4月1日時点で指定された公立小中高校などは昨年より394校増え、38都道府県の1183校。文科省は全小中学校での導入を促しているが、現在はわずか3・6%にとどまる。
背景には、学校運営や人事に地域住民ら外部の人間が関与することを嫌う学校の閉鎖性がある。大津市で自殺した生徒が通っていた中学校と市教委も当初、「自殺の練習をさせられていた」と記された生徒アンケートを公表しないなどの閉鎖的な対応をとり、批判を浴びた。
貝ノ瀬氏は「教師以外の大人の目が、学校に注がれていることが重要で、学校に対し、良い点も悪い点も指摘する人がいないと、開かれた学校とはいえない」と指摘している。
【用語解説】コミュニティ・スクール(地域運営学校)
保護者や地域住民らでつくる学校運営協議会を持つ学校。保護者や地域住民の意見を学校運営に反映させることを目的に平成16年、地方教育行政法改正で「学校運営協議会制度」として法制化された。学校評議員制度が、評議員の意見を学校が採用する保証がないのに対し、学校運営協議会は学校運営の議決機関と位置付けられているのが特徴。
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コミュニティ・スクール 荒れた中学校を再生
産経新聞 2012年8月21日(火)7時55分配信
CS導入以前に、「地域に開かれ、地域に支えられる学校」を目指し「荒れた学校」の立て直しに成功した事例がある。
岡山市立岡輝(こうき)中学校は平成9年ごろまで、教師が生徒から日常的に暴力を受けるなど「生徒指導困難校」だった。教師は「事件対応」に疲れ、校長も2人続けて病に倒れた。
10年に教頭として赴任し、その後校長として改革にあたった森谷正孝氏(62)は「思い切って地域の協力を得る以外、道はないと決断した」と振り返る。
ジャズ演奏会や映画会、バザーなどのイベントを学校で開催。地域住民を学校に呼び込んだ結果、校内暴力は次第になくなり、職員室にたむろしていた不良グループは自分の教室に足を運ぶようになったという。
15年9月には地域住民の提案で常時、学校に地域住民が入る「シニアスクール」を開校。60歳以上が週3回、学校の空き教室で、英語や社会などを学び、年に数回は給食や行事でも生徒と交流する。
「生徒たちは(祖父母に近い)3世代の雰囲気を感じ、明らかに落ち着いた」という森谷氏は、「校長一人ではなく地域と一緒に学校を運営しているという安心感が得られる。学校と地域が本気になれば学校は変わる」と話している。