館山の中2自殺:教頭、市教委へ異動 半年後に指導主事、父「隠蔽図った」 /千葉
毎日新聞 2012年9月6日(木)11時56分配信
館山市内の中学2年の男子生徒が08年9月、自殺した問題で、生徒が命を絶った半年後、男子生徒が通っていた中学の教頭が同市教委に異動し、管内の学校に指導助言する「指導主事」として男子生徒の自殺問題の担当をしていたことがわかった。
男子生徒の自殺後、同校は他の生徒へのアンケートを実施し、報告を受けた市教委は「からかいなどいじめにつながる事実はあったが、死に直接結びつく要因は分からなかった」と父親らに報告。異動はその後に実施された。
男子生徒の父親はさらに詳細な調査内容を聞くため、学校側とやり取りした際、09年4月付の異動の事実を知ったという。父親は「とても驚いた。市教委が中学校と一体となって事件に幕を引こうとしたとしか思えない」と強く反発したという。
市教委によると、この教頭は中学に赴任する前にも市教委で指導主事をしており、現在は市内の小学校の校長に昇進している。
市教委は「人格識見を総合的に判断して行った人事で、他意はなかった」と説明しているが、父親は「事実関係を隠蔽(いんぺい)し、調査の徹底を見送る結果になったのではないか」と批判している。
◇市議会でも質問相次ぐ
館山市内の中学2年の男子生徒が自殺した件で父親が同市教育委員会に再調査を求めている問題は、自殺が報じられた5日、開会中の同市議会で2人の議員が市教委に説明を求めるなど大きな波紋が広がった。
市議会では、森正一、石井敏宏両市議が「いじめ」問題で質問に立った。石井議員は男子生徒の自転車のパンク事件など、毎日新聞が報じたいじめの事例を「市教委は認識していたのか」とただした。
市教委の出山裕之教育長は、自殺後の生徒アンケートなどでわかった男子生徒に対する「からかいや悪口の事実」について「いじめ」であることを認めたが、同時に「学校として、いじめと自殺との因果関係があるとは特定できなかった」などと当時の調査の結論部分だけを繰り返し答弁。その後も、「いじめ問題は、早期発見、早期対応が何より重要。教師は、いじめ被害を受けた子どもの心に寄り添うことが大事だ」と一般論を述べるなど具体的な自殺の原因や背景については言及を避けた。【中島章隆】
9月6日朝刊