神戸事件は氷山の一角 「札付き教師」放置する教育現場の闇
NEWS ポストセブン 2019/11/24(日) 7:00配信
神戸市の小学校で起きた教師間のいじめに端を発し、次々と表面化する教師による度を超えたハラスメント事件。教育現場の崩壊は目に余るレベルにまで達しているが、その背景には、次々と問題を引き起こす“札付き教師”を放置する管理者の「事なかれ主義」が横行していた。教育評論家の石川幸夫氏が、全国から寄せられた具体的な相談事例を挙げながら糾弾する。
* * *
各地の教育現場から、耳を疑うような事件が日々新聞やテレビ、そして、ネット記事等を賑わせている。その中でも、やはり神戸市東須磨小学校で起きた教師間の暴力・暴言事件は、世間に大きな衝撃を与えた。
加害教師たちは、現場を混乱させ、子供たちの学ぶ機会を一時でも奪い、学級運営に大きな影響を与えたことに対する直接の説明責任を果たしていない。迷惑をかけた子どもたちに直接謝罪もしていないばかりか、市の教育委員会が下した分限休職処分について、代理人を通して不服を申し出た教師もいるそうだ。自己防衛に終始し、教育現場を預かり国民教育を司る教師であるという自覚がないのは指摘するまでもないだろう。
この問題は「神戸方式」(※教員の配置・異動などに学校長の意向が強く働くシステム)という神戸市独特の人事管理であると一部で言われているが、そうではない。全国の教育現場、それも保育園・幼稚園から小中高大学からは、こうした教師や学校管理者の問題が続出している。決して神戸だけの特殊ケースであると矮小化してはならない。
問題の本質は、なにか教師による事件が起きる度に指摘される学校、教育委員会の「隠蔽体質」こそ、新たな事件を生む原因になっているのではないだろうか。以下の事案は、この数年、私が直接相談を受けたケースだ。
【葛飾の小学校で起きた“授業をボイコットする教師”】
数年前、東京・葛飾区にある小学校の先生について、小学2年生の子どもを持つ保護者から相談を受けた。担任がまじめに授業をしないことを子供が両親に報告したことで明るみになった。
内容を聞いてみると、授業中は自分の好きなプロ野球の話ばかりで、一向に授業を行わないという。それが事実であるかどうか何人かの保護者が実際に授業見学を行ったところ、状況は子供からの報告通りだった。保護者たちはすぐに教頭に報告し、その後、教務主任や学校長も授業視察と指導を行ったが、当該教師の態度は反抗的で、校長の言葉にも一切耳を貸さなかったという。
その後も保護者が来てもお構いなく、教師は雑談のみで授業を終えたり、自習時間を多くして教科書を開くことがなかった。たまりかねた保護者たちは教育委員会にも出向いたが、その対応は、まさに今回の神戸と同じであった。
型どおりの授業見学、口頭注意、直接指導……。しかし、授業内容は一向に改善されず、担任の交代を全クラスの保護者意見として伝えたが、「それはできない。もうすぐクラス編成がありますから、それまで待ってください」との一点張りだったという。
【ベテラン教師が“札つき”のパワハラ体質】
千葉県内にある公立小学校のベテラン女性教師(40代)は、生徒の身体的な特徴をあげつらってからかったり、特定の生徒ばかりを何時間も叱ったりと、いわば虐待し放題のクラスとなっているという。その影響で、ターゲットになった生徒ばかりか、周りの生徒も精神的苦痛を訴えて登校拒否になってしまった。
生徒たちの親は、もちろん校長や教育委員会にも訴えているが、校長は見て見ぬフリ(自分の在任中は問題を表面化したくない態度)、教育委員会は該当教師の授業を視察しに来たりはするが、その時だけは教師もおとなしく(当たり前だが)授業をしているという。
その教師は前に赴任していた小学校でも生徒から授業をボイコットされるなどして、担任を外された挙げ句、今の小学校に来た経緯があったことが親たちの情報により判明したが、学校側から事の詳細は一切外部に知らされていない。
いま、親の何人かは子どもにICレコーダーを持たせて「証拠」を掴もうとしているという。
【スクールセクハラ教師を管理する副校長も“同罪”だった】
今年、埼玉にある公立中学の生徒からスクールセクハラの訴えがあった。仮にA先生(保健体育担当の30代の男性教師)としておこう。部活の先輩たちから、「A先生には気をつけて!」と学校内でも女子の中で囁かれていた。特に夏のプール授業になると、女子生徒をじろじろ見つめ、気に入った子には下から上へと舐めるように見る。男子生徒からも、いやらしい先生として悪評が立っていた。
しかも、見るだけでなく、水着の女生徒の肩に手を置いたり、近くまで来て肌に触れたりと、行動自体も問題視されているという。生徒たちは女性教師にも相談するが、学校の対応はどこか消極的だった。その後、副校長がプール指導を見学に来たのだが、なんと、その副校長も同じように女生徒からA先生と同様の見方をされていた。
副校長は問題の対応策(?)として授業の記録を写真に収めるという行為に出たが、すぐに問題となり、写真は削除された。いったい学校という密室でどんな生徒指導が行われているのか。管理者の行動も厳しく監視しなければならない時代。こうした、教師の行為は学校だけに留まらない。
【わいせつ保育士の告発が“モンペ”扱いされる羽目に】
仙台に住む方から、3歳の娘さんの事で相談を受けた。お子さんは、保育園から帰ってくると何だか様子がおかしく、聞けば男性保育士に誰もいない遊具置き場に連れて行かれ、わいせつ行為を受けたと震えながら訴えたというのだ。
すぐに親は担任と園長にこの話を報告したが、「男性保育士のそうした行為は確認されない」と、口頭で伝えられるに留まった。それどころか、園からはモンスターペアレントとして見られるようになり、まともに話を聞いてもらえなかった。警察にも被害を届け、娘さんは事情聴取を受けたというが、3歳の子供の話だけでは立証は難しい。ICレコーダーも持たせたが、証拠になる録音はできなかったという。
今も監視は続けられているが、園からはそれ以降何の具体的対応も見られない。密室に加え、相手が幼児である場合、語彙数の少なさからその状況を表現することは難しい。それゆえ、管理者側の危機管理能力が一層問われるのだが……。
◆教育現場を覆う“時間稼ぎ”の闇
近年、教育現場の“ブラック化”が叫ばれているように、人材不足の中で働く現場教師には様々な仕事の負担がのしかかっているのは確かだ。学習指導や成績記録簿作成だけでなく、部活対応や教育委員会への報告書作成提出など、教師がやるべき仕事は数え上げたらキリがない。近年、学校が半ば「サービス産業」と化し、過大な要求が保護者から突きつけられることもしょっちゅう。まさに疲弊しきった組織といえる。
しかし、だからといってハラスメントを繰り返す問題教師の行動や行為を見過ごしていいわけではない。その状況を正確に把握し,改善する役割を担う副校長や校長の管理責任者としての責任は教師以上に重いといえる。ところが実態は、責任回避の行動があまりにも多い。
学校現場の運営は、校長や副校長を頂点とした管理職が担っているが、たとえば学校内で教員が問題を起こした場合、校長や副校長の管理職としての責任が問われて評価に傷がつけば、その先の昇格(教育委員会等)にも影響を与えかねない。そこで、彼らが取る対策は、ポーズだけの口頭注意を続けて教員の定時異動を待つという“時間稼ぎ”だ。
子供間のいじめや暴力問題なども同じ図式だ。会社と違い数年で子供たちは入れ替わるため、この間も耐えて問題を大きくすることを避ける。学校内の隠蔽体質は、いわば管理者が自分の在任中は事を荒立てたくないという「事なかれ主義」が蔓延しているものと考えられる。
この悪しき慣習は、各市区町村の学校運営で中心的役割となっている教育委員会でも罷り通っている。その証拠に、過去に何度問題を起こしても一向に同様の事案が減らず、解決できないでいる教育委員会がたくさんあるからだ。
また、問題を起こした教員のたらい回しや、全国的に問題を起こした教員の情報共有ができていないことも大きな問題点として挙げられる。細かくは省くが、教育委員会制度は国(文部科学省)・都道府県教育委員会・市区町村教育委員会でそれぞれ役割分担があり、そこに多くの権限を与えられていない学校長の存在もある。つまり、ひとつ問題が起きても円滑な対応が取りにくく、責任の所在が曖昧で見えにくい体質になっている。
いま、一部の見識者からも出始めているが、教育委員会そのもの存在理由や必要性の有無が問われている。少なくても責任の所在や権限の範囲について明確にすべく、教育委員会制度の見直しは急務である。
また、事後でしか機能しない第三者委員会も、もはや有名無実化している。今後も学校教育の現場を監視する第三者の目は必要になるが、それは教育関係者でなくてもいいだろう。町内の自治会から委員やカウンセラーを選出したり、場合によっては文科省が推し進めているスクールロイヤーといった人たちの存在も、見えない学校の体質・本質を見抜く目となるはずだ。
新たな学習指導要領が適用されるなど、2020年度から本格的に始まる教育改革──。問題となっている大学入試問題などの前に、まずは義務教育を中心とした教育現場の本質から改革していかなければ、教育機関に対する不信感は増すばかりだろう。