和歌山市の漁港で23年4月、衆院補選の応援演説中だった岸田文雄首相(当時)に向けてパイプ爆弾が投げつけられた事件で、殺人未遂など5つの罪で起訴されている木村隆二被告(25)の裁判員裁判の初公判が4日、和歌山地裁で開かれ、木村被告は火薬の製造などは認めたうえで「殺意はありません」などと証言し、起訴内容の一部を否認した。 起訴状によると、木村被告は兵庫県川西市の自宅で、黒色火薬を詰め込んだ鋼管の両端を蓋で密閉して、導火線を接続した構造の“パイプ爆弾”を自作。23年4月15日午前、和歌山市の雑賀崎(さいかざき)漁港で、衆院和歌山1区補選の応援演説に訪れた岸田元首相のそばに筒状の爆弾を投げつけ、爆発させたとされる。岸田元首相は逃げて無事だったが、警護の警察官、聴衆ら2人が約1~2週間の軽傷を負った。 和歌山地裁には早朝から47の傍聴券を求めて101人が列を作った。同地裁は異例の厳戒態勢。通常は誰でも裁判所に入庁可能で、法廷に入る際にボディチェックをするだけだったが、この日は入口、出口を定めて金属探知機で入庁者全員を検査。さらに駐車場も閉鎖して、警察車両1台だけが中央に。昨年の9~12月に開かれた“紀州のドンファン”事件の裁判よりも物々しい雰囲気に包まれた。 関係者によると、木村被告は現行犯逮捕後から一貫して黙秘。弁護側は1月20日に開かれた公判前整理手続きなどで殺意を否認する方針を示していた。殺意があったかどうかの判断において、検察側は第2回公判(5日)で、爆発物を鑑定した物理学の専門家らの証人尋問を行って、爆発物に殺傷能力があったことを立証して「殺意があった」と主張するとみられる。