「おじさんがおばさんを撃ったのは事実でも、それがイコール真実とは限らねぇんじゃないか」 工藤新一の声を使った江戸川コナンが、毛利蘭に電話越しに伝えるセリフが印象的な劇場版第2作目『名探偵コナン 14番目の標的(ターゲット)』(1998年)。4月18日に公開を控えた劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像』で毛利小五郎が物語の中心人物になることがわかっている今だからこそ、観ておきたい傑作だ。 突如、小五郎の身の回りの人間が次々と襲撃されていく連続事件が発生。現場に残された短剣や花のモチーフから、トランプのカードに準えて名前に「十三」から「一」までの数字が入ったものが、順番に狙われていることが判明する。その犯人として捜査上に名が挙がったのが、仮出所したばかりの村上丈という男。10年前に小五郎が逮捕した元トランプ賭博のディーラーだった。新たな被害者を出さないためにコナン、蘭、小五郎は尽力するが、犯人は意外な人物だった。 本作では小五郎の妻・妃英理が映画に初登場すると同時に、「妃=クイーン」として2番目に狙われてしまう展開もあり、他の劇場作品の中でも最も毛利一家の絆に焦点が当てられていると言える。小五郎が活躍する、いわゆる「おっちゃんカッコイイ映画」は他にも『名探偵コナン 水平線上の陰謀(ストラテジー)』(2005年)が挙げられるが、『水平線上の陰謀』が“探偵としての小五郎”のカッコよさを描いた作品であるのに対し、本作『14番目の標的』は“元刑事としての小五郎”を堪能できる映画だ。 凄腕刑事だった毛利小五郎 基本的に飲んだくれでだらしなく、推理力もイマイチな小五郎。そんな彼が実は“警視庁内で1、2を争う拳銃の腕前”であることが本作で明かされる。もともと柔道強豪の米花大学に在籍していた時には、全国優勝を果たした同級生よりも強いことがアニメ第28話の『小五郎の同窓会殺人事件』でも明かされており、そんな彼だからこそ事件の犯人を一本背負いで確保することも多い。そして『14番目の標的』では、彼が警視庁捜査一課強行犯係を辞めて探偵になった経緯が明かされる。 当時、上司の目暮と共に逮捕した村上が、取り調べの最中にトイレで警察官の隙を見て銃を奪い、たまたま小五郎に着替えを渡しに職場を訪れていた妻の英理を人質にとったのだ。そんな彼に銃を向ける小五郎。腕前は確かな彼が、あえて英理の太ももに銃弾を掠めるようにして発砲し、不意を突かれた村上の左肩を続けて撃った。 現場に居合わせたショックでこの件を忘れていた蘭は、改めて父がなぜ母を撃ったのか理解できず、むしろ小五郎に対して失望してしまう。しかし、その真意は人質の足を怪我させることで逃走する犯人にとって足手纏いにさせるためで、犯人逮捕ではなく人質を助けることを優先する行動だった。加えて、本作のラストで海に落ちそうになる犯人を死なせないように必死に捕まえ、罪を償わせようとする姿も含めて“刑事の小五郎”は本当にカッコいい。