『PATRIOT プーチンを追い詰めた男 最後の手記』(講談社) アレクセイ・ナワリヌイ著 / 斎藤栄一郎、星 薫子訳 定価3300円(税込) ロシアの反体制活動家アレクセイ・ナワリヌイ(1976-2024)による自叙伝と獄中記。執筆は自叙伝部分が2020年8月の毒殺未遂事件後のドイツ・ベルリンでの療養中に始まり、獄中記はロシア当局の出頭命令で2021年1月の帰国直後に収監されてから断続的に書かれている。旧ソ連で子供時代を過ごし、ソ連崩壊後のロシアの混乱、プーチン独裁の恥部など、ナワリヌイ個人からみた「裏現代史」としても興味深い。筆者は1980年代の旧ソ連の「ペレストロイカ(改革)」以降、ロシア東欧地域への関心を深めロシア語を学び、ウクライナを含め現地へ20回近く渡航、米コロンビア大学のロシア東欧研究所などで研究を重ねてきた。本書を一読し、いまのロシアが、革命以前のロマノフ王朝から続く権威主義と欺瞞、一部の者が富を独占する仕組み、猛毒を使う暗殺、一般市民を軽視する情報操作など、何もかもが全く近代化されていないことに改めて驚かされた。 評者:昭和女子大学 現代ビジネス研究所 研究員 藤澤志穂子