<自殺防止策>言動で危険性を察知…さいたま市教委が手引

<自殺防止策>言動で危険性を察知…さいたま市教委が手引
毎日新聞 2012年11月6日(火)11時7分配信

 子供たちの自殺を防ごうと、さいたま市教育委員会は、児童や生徒の言動から自殺の危険性を事前に察知し対応する教師向けの手引を作成した。自殺につながりやすい言動を緊急度別に3段階に分け、それぞれ対応策を盛り込んでおり、9月に試験的に導入して以降、50件を超える報告が寄せられているという。文部科学省の担当者は「子供たちの行動を緊急度別に分類した自殺対策は珍しい」としている。
 市教委は08年、市立中3年の女子生徒(当時14歳)が自殺したのをきっかけに、生徒や児童を対象にした心理アンケートを実施するなど自殺対策の強化を図ってきた。しかし、子供の自殺が全国各地で相次いでいることを受け、より実践的な対策を盛り込んだ手引の作成を決めた。

 手引には、市内で過去に起きた事例などを基に、自殺につながりやすい児童・生徒の言動を例示。その内容によって緊急度1〜3に分類し、教師らに(1)本人との面談(2)保護者への連絡(3)市教委への報告−−などの対応を取るよう求めている。

 例えば「『死にたい』などのメールを友達に送っている」「自殺の道具を用意している」などが確認された場合は「緊急度3」となる。

 ある市立中では、女子生徒が「死にたい」「生きていても意味が無い」などとノートに書き込んでいることを担任が把握。関係職員を集めた会議を開催し、その後、市教委に報告した。臨床心理士による面談を実施した他、女子生徒が登下校時に一人にならないように見守る体制をつくった。この生徒は現在、定期的に面談を受けながら通学しているという。

 市教委は9月、市内の小中高など計166校に手引を配布。該当する事案は54件(2日現在)に上るという。村瀬修一指導2課長は「手引によって教師の観察力が高まり、迅速で適切な対応ができるようになってきたのではないか」と話し、桐淵博教育長は「子供の自殺は社会の大人全員の責任。子供たちのサインを絶対に見逃さず、一人も自殺させないようにしたい」と強調している。【林奈緒美】

 ◇自殺の危険性が高い場合の主な具体例

<緊急度3>

▽自殺の具体的な手段、日時などを決めている

▽周囲に自殺を宣言している

▽遺書や自殺に関するメモを書いている

▽自殺するための薬やロープなどを用意している

<緊急度2>

▽リストカットなどの自傷行為がみられる

▽成績が急激に低下する

▽身だしなみを気にしなくなる

▽自己否定的な言葉が多く死や非現実的なものに興味を持つ

<緊急度1>

▽遅刻や欠席が目立つ

▽元気が無くおどおどしている

▽少しのことでイライラしたり、ふてくされたりする

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