<いじめ>半年で14万件 専門家「対応見直しの契機」 現場「多角的支援策を」
毎日新聞 2012年11月23日(金)18時10分配信
◇専門家「対応見直しの契機」
今回の緊急調査は、都道府県ごとにばらつきが激しく、全国的な正確な分布は把握できない。しかし、啓発的な意味において、専門家は評価している。
「いじめとは何か」の著者、森田洋司・前大阪樟蔭女子大学長は、鹿児島県などでいじめの認知件数が増大したことを「評価すべきだ」という。「今回の緊急調査はこれ以上の犠牲者を出さないため。個人面談やアンケートなど調査法が違い、結果のばらつきは理解できる」と分析した上で「認知件数を上げるのは、いじめに対応する積極的な姿勢の表れ。むしろ件数を問題視することが、いじめを隠すことにつながる」と警鐘を鳴らす。
国立教育政策研究所の滝充・総括研究官も「鹿児島の3万件は驚かない。全国で30万〜40万件でもおかしくない」。小中高校は全国に約3万7000校あるからだ。滝氏は「調査は学校が対応を見直すきっかけになる」と評価する。
◇現場「多角的支援策を」
調査からは、いじめ問題への対応の課題も浮かんだ。
文科省は、いじめ把握のため児童生徒へのアンケート実施を教育委員会に求めてきた。緊急調査で都道府県と政令市の全教委が「学校に実施を求めた」と回答したが、市町村教委は8%余りが求めていなかった。また、教職員を対象にしたいじめの校内研修は、公立小中高校の12%余りが「実施していない」と回答。文科省は傷害などいじめが犯罪行為の可能性がある場合には警察への通報を求めているが、公立小中高校の11%余りが「通報していない」と答えた。
文科省は社会福祉士などのスクールソーシャルワーカーを現在の1113人から倍増させ、臨床心理士などのスクールカウンセラーを公立中の全校に、公立小の約65%に配置する計画を立て、予算要求している。毎日新聞が実施した現役教師104人へのヒアリング調査からも、支援スタッフを求める意見が目立った。茨城県の50代の男性中学教師は「担任となかなかつながれない子供たちもいるので、いろいろな窓口を用意したい」とした。さらに、授業を持たない生徒指導担当教師の配置、警察や児童相談所との日常的な連携に加え「弁護士に相談できるような仕組みを。無理を言う加害者側の保護者に教師が泣き寝入りすることも多い」(大阪・50代小学女性教師)など、より多角的な支援策を求める声が相次いだ。