まるで家畜、園児に「風邪予防」と薬物強制投与 中国各地で発覚

まるで家畜、園児に「風邪予防」と薬物強制投与 中国各地で発覚
産経新聞 2014年3月23日(日)21時0分配信

 中国陝西省西安で今月中旬、健康な幼稚園児に「予防」と称して医師の処方なしに多量の抗ウイルス剤を飲ませていたとして、園長ら5人が逮捕された。これまでのところ重篤な副作用は見つかっていないとされるが、事件後、同様の幼稚園が他の地域でも相次いで発覚。保護者らの間には、無節操な投薬が業界全体の“暗黙のルール”なのではないか、と疑念が広がっている。(田中靖人)

 ■子供の「密告」で発覚

 陝西省の地元紙、華商報(電子版)が14日付記事によると、刑事拘束されたのは西安市内の幼稚園2カ所の園長ら5人。市公安当局などの発表によると、「月謝」を確保するために風邪で欠席する園児の数を減らそうと、医師の資格がないのに抗ウイルス剤「ABOB」を園児に服用させていた刑法336条違反(無資格医業)の疑いが持たれている。

 幼稚園2カ所は同じ法人に属する私立幼稚園で、園児数は計1455人。園長らは2008年11月から13年10月までの約5年間、医療機関の名前をかたって医薬品販売会社4社から10回にわたり、ABOB5万4600錠を不正に入手。秋と春の季節の変り目に、日0・5錠から1錠を2〜3日間、連続で園児全員に服用させていたとされる。

 14日付の中国青年報(同)によると、事件は、ある園児が7日、何の気なしに「ボクは風邪引かないよ。だって幼稚園で薬を飲んだから」と話したのを不審に思った母親が翌日、薬を隠して持ち帰らせ発覚。事前に相談もなく、処方箋が必要な薬であることを知った保護者らが12日に幼稚園に抗議に押しかけて騒ぎが広がったため、市当局が園長らの拘束に踏み切った。

 ■長期投与の疑いも

 青年報によると、園内には複数年にわたって2〜5月の毎月と8、11月に薬物を投与した記録が残っており、投与期間は「春と秋の2〜3日」とする当局の発表に疑いを持つ保護者もいるという。

 また、ある園児が嫌がって薬をはき出したところ、「罰として立たされた」とか、トイレにはき出したことが発覚して以降、薬を飲む時間はトイレが使用禁止になっていたという証言もある。

 週刊誌、南方週末(同)の14日付記事などによると、同園は、月に15日間休むと1カ月分の月謝が不要になるシステムで、保護者は「教員の給与が出席する園児の数に応じて支払われていた」ことが事件の背景にあると主張している。さらに、保育園の責任者が地区政府幹部の愛人だという噂まで広がり、西安市政府が否定する騒ぎになった。

 ■予防効果なし

 園児に投与されていた薬は、使用が始まって半世紀近くがたつ中国では一般的な抗ウイルス剤。インフルエンザやヘルペスなどの「治療」に利用されるが、20時間程度で体外に排出されるため、「予防効果」はない。このため、なぜこの薬を投与していたかは不明だが、天津市の医師は、予防効果があると「誤解」した可能性を指摘している。

 だが、この薬は長期間にわたって服用すると、肝臓や腎臓、泌尿器系統に障害が出る可能性があるという。事態を重くみた市当局は園児らの検査を実施。結果に異常のある子供はいないとしているが、これまでに原因不明のめまいや腹痛を訴えていた園児が複数おり、追跡調査を求める声が上がっている。

 集団で飼う家畜の病気予防のため、飼料に抗生物質を交ぜる方法は各国で見られるが、予防効果もなく副作用のある薬を大勢の園児に無理やり飲ませていた形で、北京の地元紙、新京報(同)は13日夜、「病気でない子供に薬を飲ませる幼稚園の方が“病気”だ」とする論評を掲載した。

 ■他にも次々と

 西安の報道が広まった2日後の16日、吉林省吉林の公安当局は市内の幼稚園経営者秘書ら3人を同じく無資格医業の疑いで刑事拘束した。市内4カ所の幼稚園で、ABOBを乱用した疑いという。また、湖北省宜昌でも17日、同様の疑いで幼稚園1カ所に休園が命じられた。

 事件の広まりを受け、新京報(同)には、幼稚園での違法な薬物投与は「個別の案件ではなく、業界の潜規則(暗黙のルール)ではないかと噂されている」という法律家の指摘や、「幼稚園の法的責任だけでなく、わが国の薬品管理も問題視されるべきだ」とする医師の批判が相次いで掲載されている。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする