小学校が生徒に携帯を押し売り・・・「購入しないなら学校に来るな」=中国

小学校が生徒に携帯を押し売り・・・「購入しないなら学校に来るな」=中国
サーチナ 2014年3月26日(水)11時21分配信

 雲南省曲靖宣威市にある阿都郷で、小学校が生徒家庭に携帯電話を強制的に購入させていたことが分かった。費用は通信料などが込みのパックで500元(約8270円)で、学校側は教師を通じて「購入しないと授業を受けさせない」と強制していた。阿都郷は指折りの貧困地帯で、生徒家庭にとって関連する出費は大きな負担になっていたという。中国新聞社が報じた。

  「郷」とは中国で農村部に設けられる行政単位で、複数の「村」が1つの「郷」を形成することが一般的だ。阿都郷は雲南省でも、特に貧困な地域とされる。

 阿都郷には小学校14校、中学校1校があり、生徒総数は6405人だ。携帯電話の事実上の強制購入は、阿都郷の小学校のうちでも、格式が高いとされる阿都郷中心学校だった。小学校1校と中学校は、生徒側に携帯電話の購入を求めていなかった。

 生徒が購入させられた料金体系では初期費用の500元以外に、契約後2年間は毎月最低50元を支払うことになっていた。

 生徒側に携帯電話の購入を求めた阿都郷大佐村完全小学校の呉維躍校長は、「教師は出した宿題を保護者にもメールで知らせることができる。生徒は保護者などに連絡をすることができる。生徒は、登校や下校の状況を自動メールで保護者に知らせることができる」など、携帯電話の購入を求めた理由を説明した。ただし、学校側が機種や契約内容を決めて生徒側に強制したことについての説明はない。

 阿都郷中心学校の張承邦校長は「生徒側に強制したことはない」、「あくまでも保護者の意思による購入」と説明。しかし実際には、クラス担任が受け持ちクラスの生徒に必ず購入するよう求め、学校長は各クラス担任が「任務を遂行」できたか確認していた。

 支払いは保護者が学校に出向いて行うことになっていたが、地元庶民にとっては相当に大きな負担なので、支払う気にはなかなかなれなかった家もある。ある保護者は「子どもが学校に行こうとしない。理由を聞くと、先生に『金を払わないなら、学校に来るな』と言われた」と答えたという。

 同問題は中国中央電視台(中国中央テレビ、CCTV)が紹介したことで、有名になった。市は問題を重視し、調査と指導を開始した。3月23日までに、生徒の家庭1100世帯が携帯電話を購入していたとが分かった。

 うち997戸に対しては解約の上、支払った費用を返還したという。ただし、費用を返還したのが携帯電話関連の企業側か、行政側かについては明らかにされていない。阿都郷中心学校の学校長は25日までに停職処分になった。今後、生徒側に携帯電話を購入させた背景が明らかになれば、さらに厳しい処罰が科せられる可能性もある。

 中国中央政府は、小学校から高校までの学校運営に関連して、「(学校での活動そのものとは言えない、付加的な)サービス性の費用発生については、生徒または保護者の意思を原則とし、強制的にサービスを提供して費用を徴収してはならない」と定めている。

 雲南省は、学校が生徒側に対して強制的に出版物、学用品、各種用具を販売することを禁じている。

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◆解説◆
 中国でも、社会のさまざまな問題をメディアが「暴露」することが、特に珍しくはない。体制批判は許されず、メディアが自主的に有力者を批判することも極めて難しいが、「社会を監視し、問題を告発する」というメディアの役割りは、「かなりの限界はあるものの、ある程度果たしている」と言ってよい。

 しかし、社会の問題を告発する場合にも、当局の圧力を免れることは困難とされる。つまり、地元当局に監督されるメディアが地元の問題を報道することは難しい場合が多いとされる。

 そのために目立つのは、「上級機関が管轄するメディアによる問題告発」だ。上記問題の場合、中国中央テレビや中国新聞社は「中国中央」が管轄するメディアであり、地元の市や雲南省が直接“指導”することはできない。

 また、1地方のローカルな問題を、他の地方のローカルなメディアが告発することも、珍しくない。たとえば、雲南省で発生した社会問題を四川省のメディアが報じるなどだ。この場合、雲南省当局が四川省のメディアを直接“指導”することができないため、比較的自由に報道できることになる。そのため中国では、「ローカルなメディアが地元の問題を告発できず、他地域メディアの報道で、全国的に知られるようになる」ことが、時おりある。

 この「情報流通の構造」は中国に進出した日本企業なども、十分に踏まえておく必要がある。進出地以外の、それほど重要ではない地域のメディアの取材にもきちんと対応しておかないと、悪意ある報道をされる可能性が高まるからだ。いったん報道されれば、その情報が「真実」として、インターネットなどでまたたく間に全国に広がることになる。

 中国の場合、いったん記事化されると、他のメディアが特に「裏取り」もせずに、同じ情報を次々に発表する場合が珍しくない。(編集担当:如月隼人)

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