体罰、いじめ…行政職が調査指揮 大阪市教委「なれ合い」排除
産経新聞 2014年4月7日(月)15時33分配信
大阪市立桜宮高校(都島区)で生徒が自殺するまで体罰を見過ごした大阪市教委が今年度、体罰やいじめの外部通報を調査する担当者を、教員出身の職員から事務局畑の行政職に変更した。学校側が指導に従わない場合は「命令」できることを学校管理規則にも明記。教員出身の担当者と学校側の間で「なれ合い」が生じるリスクを排除し、体罰やいじめの早期発見、解決を目指す。
◆桜宮問題への反省
「行政と教員で力を合わせて一緒に頑張っていきましょう」。新体制が始まった1日の午前9時。市教委の沼守誠也教育次長は事務局指導部の幹部職員を集め、こう訓示した。
市の公益通報制度の窓口に体罰やいじめの情報が寄せられ調査が必要になった場合、指導部の指導担当が学校に調査を依頼し、調査内容をチェックしてきた。
従来は約70人の指導担当が、いずれも学校と事務局の間を異動で往復する教員出身の「指導主事」だったが、今年度から事務局畑の行政職4人が新たに加わり、調査を担当することになった。
市教委によると、指導担当は教員研修で授業の質を高める教科指導も担っていたため、教員出身者が占めていた。しかし、桜宮高校で平成24年12月に男子バスケットボール部の主将が自殺するまで同部の顧問=懲戒免職=の体罰を把握できなかったことへの反省から、体制の変更に踏み切った。
◆規則に「命令」明記
「自殺を防げていた可能性もある」。同校の体罰を調査した市外部監察チームの報告書では、23年9月には公益通報制度窓口に顧問の体罰情報が寄せられていたが、当時の校長は教員陣への聞き取りのみで「体罰はない」と報告した。
教員出身の指導主事は「生徒からの聞き取りを行えないか」と何度も求めたが、顔見知りだった校長に拒絶され、引き下がったとされる。調査をすり抜けた顧問は部員への体罰を続けた。
外部監察チームは指導主事が校長を指導する仕組みについて「なれ合いの調査になる可能性が否定できない」と指摘。報告を踏まえ、市教委は行政職を配置するだけでなく、調査で指導力を発揮できるようにするため、学校管理規則に「命令できる」と明記した。市教委によると、地方教育行政法では、市教委は学校側に命令できるとされている。しかし、現場レベルでその認識が弱いため、あえて規則に書き込んだという。
◆複数の視点生かす
指導の担当に行政職が入ることは市教委では新たな取り組みだが、他の教委では珍しくない。
その一つである京都市教委では、「現場に精通する指導主事と教育行政のプロが現場に行き、それぞれの視点から指導できる」と、行政職が持つ利点を説明する。
日本教育再生機構の理事長を務める麗澤大の八木秀次教授も「指導主事だけでは問題を穏便に済ませようとしがちなので、行政職の感覚を取り入れることが大切」と体制変更を評価している。