元教授口利き否定 教員採用取り消し訴訟で証言
大分合同新聞 2014年11月28日
2008年に発覚した教員不正採用問題で採用取り消し処分を受け、教諭の身分を失った大分市の秦聖一郎さん(29)=小学校臨時講師=が自身の潔白を訴え県に処分撤回などを求めた訴訟の口頭弁論が27日、大分地裁(竹内浩史裁判長)であった。採用試験で秦さんら教え子の受験者一覧表を当時の県教委ナンバー2に渡した元大分大学教授(70代)が証人出廷し、「合格依頼の口利きはしていない」と不正への関与を否定した。秦さんの得点に加点操作があったとされる理由は「私には分からない」と述べた。
採用取り消しをめぐる2件の民事訴訟で、口利き疑惑が持たれたキーマンが法廷で証言するのは初めて。
元教授は当時開いていた自主勉強会で秦さんを指導。「能力や適格性も高まり、合格を期待していた」と振り返り、秦さんや家族から口利きを頼まれたことはないとした。
勉強会に参加していた学生の一覧表は「1次の合格発表の2日前、県教委に教育審議監を訪ねたが、不在だったため文書箱に入れた。翌日電話し『公正な選考を』『合格発表後に合否を教えてほしい』と頼んだ。2次試験対策を早く進めるためだった」と説明。既に1次合格者は決まっていた時期だとも述べた。
「決まっているのに、なぜ『公正に』と伝える意味があるのか」との問いには「不正ではないんだと、確認をしておいた方がいいと思った」とした。
元教授は県教委OBで、審議監を務めた経験もある。疑惑浮上後の大学の調査に「県教委在職中、各方面から(合否の)事前通知依頼があったことを知っていたが、私にはなかった」と答えたという。尋問で「どこから依頼があったのか」と問われると「記憶にない」「特定の団体とかではない」と繰り返した。
一覧表に記載した学生14人のうち11人が最終合格したが、県教委は秦さんら6人が不正合格と判断した。秦さん側代理人が「合否の通知依頼は『この人だけはちゃんとしてくれ(合格させて)』という意思表示だと思わないか。あなたのリストを審議監が把握したら、不正をもたらしてしまうかもしれないと(経験で)知っていたのでは」と質問すると、「そういうことを断っていたから分からない」などとした。
地裁は13年7月、元教授らの尋問を求めた秦さん側の申請を却下したが、今年4月に担当裁判官の構成が変わった後、姿勢を転換。最終的には秦さん側、県側双方の求めで実施した。
核心、説明されず
秦さんは閉廷後の集会で、元教授の尋問について「あらためて事件の根の深さが分かった。結局、誰がやったのか。核心は全く説明されなかった」と述べた。