子どもの事故、進まぬ把握 消費者庁4年間で5件のみ

子どもの事故、進まぬ把握 消費者庁4年間で5件のみ
朝日新聞デジタル 2014年12月8日 13時31分配信

 保育所や幼稚園などで起きた子どもの重大事故の情報が集約されず、再発防止にいかされていないとして、内閣府の第三者機関である消費者委員会が先月、改善を求める建議書を消費者庁に出した。昨年度までの4年間で同庁に報告された事故はわずか5件だったという。

■報告ルール浸透せず

 2009年に施行された消費者安全法では、企業や団体などが提供する製品やサービスで、消費者が死亡や大けがをした場合、事故情報を把握した官公庁が消費者庁に報告するよう定めている。保育所や幼稚園、放課後児童クラブなどでの事故も対象だ。

 ところが、この決まりは教育・保育施設ではほとんど守られていなかった。

 消費者委員会の調査では、10〜13年度に同庁に報告された教育・保育施設での子どもの重大事故は5件だった。これに対し、厚生労働省はほぼ同時期に保育施設で447件、放課後児童クラブで708件の重大事故が起きたことを把握していた。死亡事故も計66件含まれていた。

 また、幼稚園での死亡・障害事故は独立行政法人日本スポーツ振興センターの学校事故データベースに24件登録されていた。

 小学校での事故も報告対象だが、今回の調査報告や建議は触れていない。

 消費者委員の一人は「厚労省所管の保育所で起きた事故は、文部科学省所管の幼稚園や、家庭でも起こる可能性がある」と指摘。事故情報を発生した所だけにとどめず、幅広く共有して再発防止にいかすことの大切さを説く。

 消費者庁の板東久美子長官は「教育・保育サービスも消費者安全法の対象となっているという認識が弱かったと思う」と話す。消費者庁が発足したのは同法施行と同じ5年前。ルールがまだ浸透していないのが実態だ。

 建議書は、消費者庁や内閣府、厚労省、文科省に対し、改善に向けた取り組み状況を来年5月までに報告するよう求めている。

 また、新しい「子ども・子育て支援新制度」が来年4月に始まる。政府は別の枠組みでも子どもの安全向上を図る方針で、有識者による検討会を設けて議論を進めている。

■白玉団子詰まらせ死亡、相次ぐ

 子どもが集まる施設で同じような事故が繰り返される例は、実際に起きている。

 2010年2月、栃木県真岡市の市立小学校で、当時1年生の飯沼晃太君が給食で出された白玉汁の団子をのどに詰まらせ脳死状態となった。3年間治療を続けたが、昨年1月に亡くなった。

 事故から2年後の12年7月には同県栃木市の市立保育園で2歳の女児がフルーツポンチの白玉団子をのどに詰まらせ、約1カ月後に死亡した。

 消費者委員会の調査報告によれば、白玉団子をのどに詰まらせて子どもが死亡する事故は、12年2月に東京都の保育所でも起きていた。

 真岡市の事故は消費者庁に報告されておらず、同庁が注意喚起したのは3件の事故が起きた後の12年8月だった。

 栃木市の事故調査報告書などによると、真岡市の事故の情報は市教育委員会には伝わっていたが、保育所を運営する市保健福祉部は知らなかった。同じ市でも「別組織としての色彩が強く」、情報共有の体制に不備があったと指摘した。栄養士らは「知っていれば白玉団子は使わなかったであろう」と話したという。

 晃太君の父健一さん(34)は昨年夏、真岡市の責任を問うため損害賠償請求訴訟を起こした。「まさか息子と同じような事故が県内で起きるとは思わなかった。伝わっていれば防げたはずだ。自治体や教育・保育現場の意識は低いように感じる。単に事故情報を集めて流すだけではなく、具体的な注意点や対処方法も伝えていくべきだ」と話す。(高橋健次郎、毛利光輝)

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