収監逃れ、疑惑解明遠く 京都府立医大強制捜査1ヵ月
京都新聞 2017/3/14(火) 8:37配信
京都府立医科大付属病院(京都市上京区)などが暴力団組長の病状について、虚偽の文書を作成するなどしたとされる事件は14日、府警の強制捜査から1カ月となる。吉村了勇(のりお)院長(64)は記者会見で、虚偽性を否定したが、疑問は消えない。府警による院長や主治医の講師(44)らへの任意聴取は今も続いており、捜査は長期化の様相を見せている。
指定暴力団山口組系淡海一家(大津市)の高山義友希受刑者(60)は2014年7月当時は公判中で、腎臓疾患で人工透析を受け、保釈されていた。府立医大付属病院によると、同月に生体腎移植を受けた。吉村院長や講師は高山受刑者の病状について、判決確定後の15年8月、検察庁からの照会に対し、腎疾患で「拘禁に耐えられない」と病院長名で回答書を作成し、提出した。
京都新聞社が入手したこの回答書によると、検察側は、病名や治療状況、入院の必要性など13項目について質問している。病院側は病名を「移植腎拒絶反応」とし、拘禁に耐えられない理由に「BKウイルス腎炎の併発で、免疫抑制療法の厳重な調整を継続する必要があり、改善に2年を要する」などと記載。治療に必要なものとして、免疫抑制剤の血中濃度の測定装置や、血中・尿中ウイルスの定量検査などを挙げている。
法務省は、高山受刑者が収監された大阪刑務所など、全国の刑務所など矯正施設のうち約10カ所で人工透析治療装置を設置。腎疾患患者も収監しており、「病態によるが、移植患者だから収監できない、ということはない」としている。
吉村院長は会見で、高山受刑者が移植後約1年で入院した際、血中クレアチニン(アミノ酸の一種)の値が100ミリリットル当たり1・06ミリグラムから1・17ミリグラムに上昇したとのデータを示し、感染症の危険性を指摘。「テレビなどで想像し、衛生状態の不確かな刑事施設では感染症にかかる可能性が高いと考えた」と説明した。院長の代理人弁護士によると、収容施設の設備環境や診察態勢の詳細な説明は検察側からはなかったという。
ある検察OBの弁護士は「人的、物的に刑務所の医療環境がどうなっているのか。その説明がなければ評価の土台がなく、拘禁に耐えられるのか医師は判断しようがない」と話す。
捜査関係者によると、収監を巡り、大阪高検が病院などから取り寄せた診療データなどを基に府警が昨年、捜査を開始。複数の医師に分析を依頼し、高山受刑者が当時、収監に問題ない健康状態だったとの見解を得たという。
また、講師は府警の任意聴取に対し、吉村院長に相談の上、「拘禁場所付属の医療機関により治療を継続することで拘禁が可能」「医療刑務所での拘禁なら可能」など四つの選択肢の中から「拘禁に耐えられない」にチェックし、理由を書き添えたことは認めているという。
一方、吉村院長は回答書の内容に「虚偽は一切ない」と否定している。院長の代理人弁護士は、複数の専門医に独自に見解を求め、拘禁に耐えられないとの判断が妥当だったとの意見を得たといい、「院長に相談した結果、講師が意見を変えたとしても結果が正しければ『虚偽』には当たらない」と主張している。