「洗脳不倫」慶大教授、過去には教え子に“ストーカー”行為
デイリー新潮 2017/9/25(月) 8:01配信
「洗脳不倫」教授に余罪続々! 慶応大が目をつぶった「ハーレムゼミ」(上)
憧れの大学に合格した娘が、授業を通して教授に「洗脳」され、不倫相手にされてしまったら。そんな悪夢が慶応大学で明らかになったが、大学はいまも「ハレンチ教授」も「ハーレムゼミ」も放置したままだ。教授には数々の余罪があるにもかかわらず、である。
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慶応義塾大学の出身者は、あえて母校を卑下して「低能未熟大学」と呼ぶことがあるが、むろん、本音ではない。OBや大学自身の本音、すなわち高いプライドは、たとえば、慶應義塾ハラスメント防止委員会が掲げる言葉にも表れている。
〈いやなこと、しない、させない、許さない〉
その姿勢を貫く根拠を、
〈慶應義塾は、(中略)気品の泉源・智徳の模範たることを願って発展してきた組織として、いかなるハラスメントも容認しません〉
と記すのである。
ところで、表向きのきれいごとと裏腹な禁断の愛に走る国会議員たちを見ても、今の日本、言葉が軽い。社会に有為な人材を送り出す私学の雄こそ、智徳の、言行一致の模範となってほしいが、その言葉もまた軽いとしたら、われわれは何に希望を見出せばよいのか。
現実には、慶大の湘南藤沢キャンパス(SFC)に通う2年生の斉藤菜穂さん(21)=仮名=は、イスラム法の権威である総合政策学部の奥田敦教授(57)から「ハラスメント」どころか「洗脳」を受け、不倫状態に導かれていた。それは週刊新潮9月14日号で詳報したとおりだが、慶応は〈させない、許さない〉どころか、いまも加害者になんの処分も下していないのだ。
事のあらましを、菜穂さんの母親の話を要約し、おさらいしておこう。
「お嬢さんは重度の精神病」
昨年、慶応に入学した菜穂さんは、アラビア語など奥田教授の授業を選択し、その研究会(ゼミ)にも所属する。親元から通学する彼女に教授が指定した研究テーマは「家族」。秋口から菜穂さんのもとに、教授からLINEが頻繁に届きはじめ、勉強に集中するように言われてサークルを辞め、帰宅も遅くなり、彼氏とも別れ、“研究室に泊まる”と言って外泊も増えた。次第に“家族”を恨む発言が増え、1月には家出。2月には頻繁に外泊したうえ、教授と二人で1週間、沖縄に出かけた。
両親は大学に相談し、奥田教授は総合政策学部長から「厳重注意」を受けたはずだが、菜穂さんの行動は変化しない。大学から「自分で調べてくれ」と言われた両親は、やむなく探偵に頼むと、研究室に行っているはずの菜穂さんは、教授のマンションに入り浸っていた。しかも、彼女のメモには「死ぬのが怖くなくなってきた」「先生とだったら世界征服もできそう」など不穏な文言が増える。
両親は探偵の調査結果を大学に見せるが、当初は受けつけてもくれない。3回目の結果を提出後、調査委員会が立ち上がることになり、外泊こそなくなったが、教授が深夜、菜穂さんを自宅まで送り届ける毎日。一度、両親は奥田氏を詰問したが、「お嬢さんは重度の精神病」で「相談に乗っている」との返答だった。
その後も調査委員会の結論が出ないまま、大学は菜穂さんが、奥田研究会のヨルダン研修に参加することを許可してしまう。「洗脳」をこれ以上放置できないと判断した両親は、8月17日に教授のマンションに乗り込み、泣きわめく教授を押さえ、奥の部屋で描写をはばかられる姿で震えていた菜穂さんを“奪還”した。
ちなみに、奥田教授には妻と、大学院生の娘がいる。娘は一人暮らしで、妻は教授の実家と菜穂さんが“奪還”されたマンションを行き来しており、奥田教授は妻が不在の日に、女子学生を自宅に連れ込んでいた。
ところが、その後も大学は奥田教授に処分を下しておらず、“洗脳者”がいる大学に娘を通わせられない、と心配する両親に、連絡すらしていないのである。
女にやさしく男にキレる
優位な立場を利用して学生を「洗脳」し、不倫に導いた奥田教授の罪も、それを放置している大学の責任も、十分に重いはずだ。
しかし、奥田教授が過去にも同様の過ちを犯しながら、大学が揉み消した結果、また同じ不幸が起きていたとしたら、菜穂さんのケースは大学による人災とさえ言えるだろう。
「一昨年7月、ゼミの1年先輩の山田友里さん=仮名=から事情を聞いて、事態を知りました」
と語るのは、奥田研究会に在籍していたSFCの4年生である。
「奥田先生に粘着質に付きまとわれ、悩んでいるというんです。電話やメールは何百件も来るし、自宅の周りで張り込まれたと。山田さんのマンションはオートロックだったのに、ある日、ドアを開けたら奥田先生が立ってて、慌てて閉めたそうです。完全なストーカーですよね。先生からのメールを見せてもらうと、“あなたが帰って寂しい”とか“今日は月がきれいで”とか、“妻と別れて結婚”みたいなのもありました。山田さんはゼミの先輩と交際していて、気づいた先生から、引き離すような嫌がらせも受けていました」
言われてみれば、奥田教授は最初は「山田さん」と呼んでいたが、最近は「友里ちゃん」だ。それを聞いて、この女子学生も思い当たることがあったという。
「私の呼び方も同じように変わっていて、山田さんが言うには“次に狙われるのは、あなたともう一人だから”と。奥田先生のアプローチは狡猾で、お気に入りの子は、留学を思い止まるように説得されたり、ほかの語学をやりたいと言うと必死に止められたりします。私も、アラビア語の補習だと言われて行くと私一人で、マンツーマンの指導が夜まで、ということがありました。ただ女の子には概してやさしくて、男性は、先生が話しているとき机に手が載っていただけで1時間くらい説教されたり、個人指導のときも急にキレられたり暴れられたりする。周りにいるのは女性だけでいい、という態度で、一種のハーレム状態なんです」
大学の口封じ
さて、山田さんは彼氏と一緒に、〈いやなこと、しない、させない、許さない〉のハラスメント防止委員会に訴え出た。
「ところが“逆ハラスメントになるかもしれないから、第三者委員会で真実が究明されるまで口外してはいけない”と言われて。当事者に口止めするなんて学校ぐるみの隠蔽ですよ。彼女たちが訴えた数日後、奥田先生からの説明がヤバかった。“山田さんたちはプロジェクトや研究を放り出して駆け落ちした。自分は二人に裏切られた”と言うんです。みな嫌気がさして、私の学年はゼミに10人ほどいましたが、8人が辞めました」
結局、山田さんを自宅マンションに連れ込んで一晩中過ごしたことの責任が問われ、年明けに奥田教授は厳重注意を受けたが、
「教授会で学部長から“今後気を付けてください”と言われただけ、という話が伝わってきました」
我々はほかの奥田ゼミ出身者にも接触したが一様に、
「思い出したくない」
と言う。被害者の山田さんもメールでこう返した。
「ハラスメント防止委員会に訴える上で、この件に関しては一切他言しないことを約束させられたので、申し訳ないけど取材は受けられません」
奥田教授の所業が、学生たちの心に深い傷を残したこと、慶応が不祥事が明るみに出ないように徹底して口封じし、反社会的な「ハーレムゼミ」を放置したこと、被害者が被害を訴えられないがゆえに、何度でも同じ被害が繰り返されることがわかるのである。
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(下)へつづく
「週刊新潮」2017年9月21日菊咲月増大号 掲載