中3自殺「社会通念上いじめにあたらず」 第三者委報告

中3自殺「社会通念上いじめにあたらず」 第三者委報告
朝日新聞デジタル 2018/3/29(木) 8:01配信

 東京都葛飾区で2014年4月に区立中学校3年の男子生徒(当時14)が自殺した問題で、区が設けた第三者による調査委員会(委員長=平尾潔弁護士)は28日、「社会通念上、いじめにはあたらず、衝動的に自死に及ぶ結果となった」とする調査報告書を青木克徳区長に答申した。区側はいじめはあったと認めていたが、調査委はそれを否定する形で結論づけた。

 調査報告書によると、男子生徒は14年4月9日、部活動でチームを決める話し合いで他の生徒と意見が分かれて黙り込んで動かなくなり、他の生徒たちが霧吹きで水をかけたり、ジャージーのズボンを下ろそうとしたりした。生徒は無言で学校から立ち去り、夕方に区内で自殺した。

 他の生徒による行為について、報告書は「常日頃からお互いにふざけあってやっていた。日常許容されていた遊びの手法」と認定。平尾委員長は「自死に至った原因として可能性が高いのはチーム決めで、他の生徒の行為には因果関係が認められない」と述べた。

 調査委は今回の調査で、いじめの定義を「いじめ防止対策推進法」で定められている「対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」をそのまま当てはめず、「社会通念上いじめと評価できる行為が認められる場合」とした。調査委は同法に基づいて設置されたが、平尾委員長は「(法律上の)定義は広く、社会通念とのずれが生じてきているため苦慮した」と理由を説明した。

 区側は当初、事故死とみていたが、その後に自殺だったと判断。因果関係を否定しつつ、いじめはあったと認めた。今回の調査結果について、遺族側は「到底納得できない」とコメントを出し、報告書の再考を求めた。(辻健治、有吉由香)

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「納得できるものではない」 葛飾中3自殺・第三者委報告に両親代理人
産経新聞 2018/3/29(木) 7:55配信

 平成26年4月にあった葛飾区立中学3年の男子生徒=当時(14)=の自殺は、いじめが原因でないとする区の第三者委員会の報告書について、両親の代理人は28日会見し、「いじめ防止対策推進法に基づき設置された第三者委が、同法ではなく、社会通念上で判断したことについて納得できるものではない」と非難した。

 第三者委の平尾潔委員長は「同法による定義は、いじめの早期発見のためで、社会通念上と乖離(かいり)している」と発言。自殺前に部員らがピンポン球を当てたり、ジャージーを下げようとした行為は「お互いにふざけ合って」やる日常の表現行為と判断したとした。

 両親の要望にもかかわらず、十分な調査をせずにいじめに該当しないとした区教委の対応は「安易に過ぎる」と指摘。第三者委による調査の決定まで1年5カ月が経過したため、「記憶の風化に伴い調査が困難になった」とした。

 これに対し、両親の代理人は、いじめの判断基準が明確にされないまま「社会通念上」でなされたと指摘。相手が決まらずショックを受けているときに、ピンポン球を当てられたりする行為を「日常の表現行為」とみなすことは納得できないとし、「ショックが増幅したかもしれない」と述べた。

 その上で、部員らの行動など認定事実を前提にすれば「なぜ自殺の原因でないと言えるのか」として、再考を求めた。

 同区の青木克徳区長らも28日会見し、区教委が27年11月に出した「同法に基づくいじめがあった」とする見解は変っていないとした。また、第三者委の発足が遅れたことを認め「今後、再発防止に務めるとともに、(事案発生時には)素早く対応したい」と述べた。

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